以下は、どれだけ早く緊張が高まるかを自分で知ることができるワークです。

体験してみよう:〈テック・ストレス〉の基本的な考え方

 自分のコンピュータで、簡単なマウス練習をして観察してみましょう(コンピュータを使わない模擬練習もできます)。今コンピュータの前にいる場合は、その電源をオフにし、マウスに手を置いて、まっすぐに座ります(模擬練習の場合は、コンピュータの前にいるかのようにまっすぐに座り、マウスのかわりに何か小さな物を手に持ちます)。

 自分の名前と住所を右から左に向かって描くような感じで、マウス(またはマウスの代用品)を動かします。それぞれ非常に小さい文字(約1cm以下)がよいでしょう。間違えないようにしながら、10~15秒間、できるだけ速く文字や数字をマウスで描いてみましょう。

 何か気づきましたか?ほとんどの場合、マウス操作する側の肩と首が固まり、体幹が硬直し、呼吸を止めていることに気づくでしょう。作業中、これらすべての筋緊張は、時間の経過とともに不快感や痛み、または最終的には身体的な筋外傷につながっていくのです。

コンピュータ作業時の5つの注意点

1.人間工学的な要因は一部にすぎない

 コンピュータを扱う職場環境で起こる私たちの身体の直接的・間接的外傷や痛みなどの身体反応の研究により、職場の機器をとり換えるだけでは十分ではないと明らかになりました。人間工学的な改善だけでは不十分であり、筋外傷の状態も改善されませんでした。

 ワークスタイルによる筋外傷や体調不良や障害を解決するには、人間工学以外にも、多角的アプローチが必要となります。

2.人は普通、痛みを感じるまでは筋肉の緊張に気づかない

 筋緊張を(筋電計で)モニターすると、従業員は「自分の筋肉には力は入っていない」と言うことがよくありました。しかし、測定結果を見れば、筋肉が収縮して緊張状態にあるとわかります。これは、靴やベルトがきつすぎることに気づかないのと似ています。靴を脱いだりベルトをゆるめたりした瞬間に気分がよくなってはじめて、それがきつすぎたことに気づくようなものです。

3.座りっぱなしは喫煙と同じく、生活習慣として好ましくない

 私たちの身体は、現代の動かずにじっとしているような職場環境には適しません。理由は、人間の歴史を見れば一目瞭然です。50万年以上もの間、地球上を歩きまわっていた狩猟採集民は、身体を非常によく動かして生活しました。今日、人々の大半は都市部に住んでいます。私たちの多くはオフィスで働いており、仕事ではほとんど身体を動かしません。それでも私たちの身体は、遺伝的には「遊牧狩猟採集民」のようにつくられているのです。