年収が「非上場化」で上がる会社ランキング【愛知県・全150社完全版】

 年収が「非上場化」で上がる会社ランキング【愛知県】で1位となったのは、中古車オークションを運営するユー・エス・エスだ。年収上昇可能金額は623.7万円と、後述するトヨタ自動車を大きく上回り、ランキングの中でも頭一つ抜けていた。

 ユー・エス・エスは1980年に設立。運営するオークションでは、複数の会場をインターネットや衛星テレビ回線でつなぎ、顧客が遠隔地から欲しい車に入札できる仕組みを取り入れている。全国展開している中古車買い取りチェーン「ラビット」も、同社の傘下だ。

 2位はコメダHDで、203.9万円増だった。同社は、カフェチェーン「コメダ珈琲店」の運営企業を率いる持ち株会社である。

 コメダ珈琲店で新メニューがヒットしたほか、テレビ番組などで取り上げられる機会が増えたことで、コメダHDの2021年3~11月期の連結業績は増収増益と好調。飲食業界全体が新型コロナウイルス禍の影響を受ける中、同社は“勝ち組”の座を確固たるものにしている。

 3位には、フジミインコーポレーテッドがランクイン。半導体ICチップの表面加工などに使われる「研磨剤」の専門メーカーで、米インテルとも取引のある実力派だ。

 それ以降の順位も見てみよう。4位にトビラシステムズ(115.5万円増)、5位にダイセキ(115.2万円増)が続いた。

 一方、世界の自動車業界をリードする“絶対王者”であるトヨタ自動車は9位で、年収上昇可能金額は92.8万円にとどまった。だが、同社の連結従業員数が36万人超、配当総額が約6800億円と規格外であることは考慮すべきだろう。

 トヨタの労働組合は22年の春闘で、職種や階級に合わせて計12パターンの賃上げ要求を行っている。働く人が多い同社だけに、これらが受け入れられれば地域経済への波及効果も期待できそうだ。

 今回のランキングでは、単体ベースの平均年収も載せた。例えば、首位のユー・エス・エスは616.9万円だ。各社は有価証券報告書の中で、平均年収を公開している。

 ただし、記載されているのは単体ベースの数字のみ。この金額は各社の年収の相場観をつかむためのものであり、あくまで参考値として見てほしい。

 また今回の試算で、配当総額を単体ではなく連結従業員数で割った理由についても解説しておこう。持ち株会社制に移行した企業の場合、連結に比べ単体従業員数が極端に少なくなるケースが多いのだ。

 2位のコメダHDを例に説明すると、連結従業員数441人に対し、単体はわずか8人である。配当総額18億円の半額をたった8人で割ったのでは、年収上昇可能金額として明らかに不適切だと判断した。

非上場化で年収はいくら上がる?
50万円以上アップは27社、トヨタケイレツが意外な不振

 なお、今回、年収上昇可能金額が50万円を超えた企業は27社だった。最後に、この27社について業種別の傾向を確認しておこう。

 業種別に集計すると、最も多かったのは「卸売業」で7社だった。ちなみに、この業種で最も順位が高かったのは前述のコメダHDである。2番目に高かったのは、理科実験器具などの専門商社、ヤガミ(全体6位、112.9万円増)だった。

 続いて多かった業種は「化学」「サービス」がそれぞれ3社、「食料品」「機械」がそれぞれ2社だった。さらに、「電気・ガス」「情報・通信」「証券・商品先物」など10業種がそれぞれ1社という結果だった。

 注目すべきは、業種別では「輸送用機器」に分類される豊田自動織機(全体48位、34.8万円増)、デンソー(全体51位、32.2万円増)、トヨタ紡織(全体150位、9.5万円増)といったトヨタ系列の自動車部品サプライヤーの順位が軒並み低かったことだ。

 だからといって、ケイレツ各社の社員はガッカリすることもないだろう。何しろ3社は、単体での平均年収がすでに670万~770万円程度と高いのだ。

 だが、仮に今回のシミュレーション結果が現実のものとなったとすると、トヨタケイレツの“エリート社員”たちの給料は、県内の他の有力企業に追い抜かれることになる。