まず、現代日本人の多くは、戦争や侵略というものは「昔にあったこと」として、対岸の火事のように捉えがちだが、日本においてもそのリスクは排除できない。

 ヒト、モノ、情報、カネの国際的な流れが加速化し、経済のグローバル化の深化が進む今日では、「戦争のリスクは減少した」「どの国も経済や国民の生活を犠牲にしてまで戦争はしない」などという意識が、日本においても先行しているイメージがある。

 だが、第1次、第2次世界大戦の時も今日も、主権国家の並存構造という国際社会の基本構造(権力構造)は何も変わっておらず、国家の行動を制御できる“超国家”や“世界政府”などは存在しない。

 よって、今日には世界に200余りの国があるが、国と国との間で意見が合わなくなったり、関係が冷え込んだりすることで緊張が走り始め、それが結果として軍事衝突に発展することは、国際社会の権力構造から考えれば十分にあり得る。

 確かに、経済の相互依存や人々の国際的移動が当たり前の今日の世界は、国が軍事行動に走るハードルは高くなったといえるかもしれない。だが、基本的な部分は何も変わっておらず、国際舞台で活躍するビジネスパーソンは、そういった潜在的リスクが常にあることを十分に理解する必要があろう。

ウクライナ侵攻に見る
世界の権力構造の変化

 また、上述したように、世界ではプーチン政権への怒りを示す反戦デモが拡大しているように、戦争を望む人は基本的にはゼロに近い。しかし、戦争は「○か×か」で言えば「×」なものである一方、「必要な軍事力」に対するハードルは各国によって違うことも事実だ。