Q:舌下免疫療法は効果があるの?

 アレルギーの原因であるアレルゲンを少量から体内に投与して行う免疫療法(減感作療法)は、唯一、花粉症の根治が見込まれる治療法です。欧州を中心に100年以上前から研究、開発が進められ、注射でアレルゲンを投与する方法は定着しています。しかし注射部位が腫れるなどの問題があり、1990年代からは舌下に投与する方法が開発され、普及してきました。すでに欧州では舌下免疫療法の効果が認められ、ガイドラインも作成されています。

 日本でも、スギ花粉症と診断された12歳以上を対象に、2014年10月から保険適用で舌下免疫療法を受けることができるようになりました。これは、アレルゲンであるスギ花粉のエキスを舌下に少量ずつ投与することで、体が過剰に反応しないように免疫システムを変えていき、花粉症の症状を起こさないようにするものです。具体的には次の方法で服用します。

(1)スギ花粉のエキスを舌下に滴下し、2分間保持してのみ込む(錠剤もあり)
(2)徐々に滴下量を増やしながら、毎日服用する
(3)スギ花粉の飛んでいない、症状がない時期から開始する。最低3年以上、数年間続ける必要がある
(4)少なくとも1カ月に1度受診する

 既に行われた臨床研究では、2年目まで規則正しく治療を継続した人の80パーセント以上で症状が軽くなり、花粉症治療薬の量や服用期間の軽減に至ったとされています。さらに、スギ花粉症だけでなく、ぜんそくなどのアレルギー反応が出にくくなる傾向があることも明らかになりました。

 治療には数年かかるとされていますが、2014年秋から治療を始めた人へのアンケート結果を見ると、1年未満でも95パーセントの人が効果を実感しています。

 免疫療法は少しずつ体を花粉に慣らしていく治療なので、しっかりとした効果が現れるまでには時間がかかります。しばらくは対症療法と併用して進めることもありますが、対症療法の薬を使わずに花粉シーズンを乗り切ることを目標に、治療していきます。

監修/永倉仁史(ながくら・ひとし)先生
1982年東京慈恵会医科大学卒業。同大学や東京厚生年金病院の耳鼻咽喉科勤務などを経て06年より現職。日本アレルギー学会専門医。花粉情報協会理事。国の花粉症研究にも参加。著書に『スギ花粉症は舌下免疫療法(SLIT)でよくなる!』(現代書林)など。
永倉仁史先生監修/永倉仁史先生

セルフドクターHP

AERA dot.より転載