2022年入試において東京都で大きな異変が起きた。学費の安さと教育の質の高さから、これまで人気を集めてきた都立中高一貫校の倍率が軒並み下落したのだ。その裏側で、都立校に手が届かなかった受験生を虎視眈々と狙う私立中高一貫校が台頭している。都立校の人気はなぜ下落したのか。頭角を現しつつある“便乗型”私立校とは何か。特集『わが子に最強の中高一貫校&小学校&塾』(全26回)の#11では、都立校を巡る中学受験戦線の最新事情に迫る。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
都立中高一貫校の倍率が急降下
「4倍台」続出で塾関係者にも衝撃
「都立中高一貫校の倍率が軒並み4倍台まで下がったのは記憶にない」。ある塾講師は、2022年の受験状況に衝撃を受けたと話す。
驚くのも無理はない。1999年に産声を上げて以来、私立より安い学費で6年一貫教育を受けられる公立中高一貫校の人気は沸騰した。東京都立の10校には特に受験生が殺到し、一時は倍率が10倍近くまで高騰したこともある。
だが、ここ数年はその勢いに陰りが見られている。22年入試ではその傾向がより顕著になり、両国(6.7→4.5倍)、大泉(5.7→4.2倍)、桜修館(5.8→4.8倍)、南多摩(4.9→4.1倍)の4校は昨年から倍率を急降下させた。
前年から上昇したのは富士、立川国際、三鷹の3校のみで、実に10校中9校の倍率が5.0を切る異常事態となっているのだ。
依然として狭き門であるとはいえ、都立中高一貫校はなぜ勢いを失ってしまったのか。はたまた、その裏側で都立校に手が届かなかった受験生を虎視眈々と狙う“便乗型”私立中高一貫校とは何か。
次ページでは、都立校を巡る中学受験の最新の裏事情を明かす。倍率という数字だけではわからない背景を知ることは、実は入試対策に直結しているのだ。併せて、難題とされる入試問題の中身も詳説する。