中学受験における塾選びは、難関校の合格実績だけで選ぶと痛い目に遭いかねない。特集『わが子に最強の中高一貫校&小学校&塾』(全26回)の#22では、関西と東海の主要塾について、最新2022年入試結果を含めた過去17年間分の合格実績を大分析。関西塾業界の最新動向と共に、わが子に最適な塾を見つけられる、あらゆるデータを公開する。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰、加藤桃子)
西の最高峰、灘中を巡る
関西主要塾の戦いの行方は?
関西の中学受験塾の覇権を懸けた“天王山の戦い”――。それは西の最難関校にして全国でも名高い灘中の合格実績だ。
この点、筑駒(筑波大学附属駒場)や御三家、新御三家など多くの難関校への「総合的な」合格実績で競い合う首都圏の塾とは異なる。
もちろん、関西にも洛南(京都府)や大阪星光学院(大阪府)、甲陽学院(兵庫県)、東大寺学園(奈良県)といった、灘中以外の難関校は数多い。だが、それでも灘中は関西ほぼ唯一の全国区の中高一貫校として、別格扱いなのだ。
その灘中の2022年入試における合格者数トップの塾は、西の名門塾、浜学園だ。前年の21年入試と同じく96人が合格し、18年連続で王者の座を守った。
一方、その陰でほぞをかむ塾がある。関西のみならず東海地方でも勢力を急拡大させている馬渕教室(運営はウィルウェイ)である。
かつて、関西における中学受験塾の御三家といえば、浜学園、希学園、日能研関西だった。だが、希学園に代わって馬渕教室が関西の「新御三家」として台頭。現在は灘中をはじめとする難関校の合格実績で日能研関西も凌駕する関西ナンバー2のポジションだ。近年は、灘中の合格者数で浜学園さえも射程内に入れている。
そして馬渕教室は、本特集#8『進学塾「馬渕教室」急成長の立役者が電撃移籍で激白「5月に新塾で悲願の東京進出」』で登場し、塾業界で剛腕として名を知られる、アップの首都圏展開特命統括の吉田努氏が、かつてウィルウェイ取締役として中学受験部門のトップを務め、昨夏に電撃退職した塾でもある。
馬渕教室の22年の灘中合格者数は、前年から1人減らして70人だ。ただし馬渕教室は、早稲田アカデミーグループの難関校特化型の塾、SPICA(スピカ。東京都)の「灘中合格対策平日講座」に講師を派遣しており、スピカの22年の灘中合格者数33人の一部は、馬渕教室の灘中合格者としてダブルカウントされている可能性がある。今回、馬渕教室は取材に応じなかったが、昨年の取材時にスピカの合格者との一部重複を認めているからだ(ただし、その数はかなり少ないという)。
だが、それでも馬渕教室が過去5年で灘中への合格者数を全国で最も伸ばした塾であることに変わりはない。合格者を減らしたとはいえ、その数はわずか1人。にもかかわらず、なぜ馬渕教室がじくじたる思いでいるのか?
次ページでは、その理由に加えて、関西と東海エリアの主要塾の合格校の平均偏差値を求めた「主要塾の『合格力』ランキング」をはじめ、「合格力と規模の相関図」「有名中高一貫校における主要塾の合格者数」など、いずれも塾選びにきっと役立つだろう八つの図表を掲載する。
この図版にわが子の学力や志望校を当てはめて考えていけば、子どもと塾の致命的なミスマッチは起きにくくなるはずだ。