売らない店のテナントの
「3つのメリット」

 売らない店のテナントのメリットとして、以下の3つを挙げることができる。

 第1にECサイトだけで物販するエマージングECショップにとっては、数多くのECサイトの中で自社の商品を認知してもらうこと自体難しい。そのため、駅の傍の一等地にある丸井の店舗で顧客に認知してもらえば、計り知れない効果がある。丸井に店舗があることによって、認知だけでなく、顧客への信頼性も高まる。

 第2に、リアルとオンラインを併用することによって、購入単価が上がる効果も出ている。たとえば、オンラインだけだとシャツしか売れないものが、店頭でシャツとスーツを合わせて試着することで、セットで購入してくれる顧客も増えている。

 第3に、ECサイト専業企業は店頭運営のノウハウを持たないが、丸井から運営受託サービスを提供してもらうことによって、接客ノウハウなども身につけることができる。

一方で丸井には
どんなメリットが?

 店頭で売らないとなると、小売業である丸井側にはどのようなメリットがあるのだろうか。

 丸井の第1のメリットは、他の商業施設にはないテナントの独自性を高められることだ。仕入販売型のビジネスモデルを採る他の店にはなかなか入居が難しいエマージングECショップでも、丸井なら出店できる。自分に合う店を常に探している若者にとっては、“宝探し”のような魅力がある。実際、丸井の来店客は、売らない店を展開してから増加傾向にあるという。

 第2に、金融事業とのシナジーが期待できる。売らない店での購入はECサイトで行うが、そこでエポスカードが決済に使われれば、それは丸井の収益となる。丸井はエポスカード限定キャンペーンなどを実施して、カード利用を後押ししている。