上場株式の遺産分割方法は?
準確定申告は誰がする?

 万一、遺産分割協議がもめて、相続人の誰が上場株式を相続するか定まらないと、次の手続きに進めず、申告もできない。相続税の申告・納税期限は相続開始から10カ月と定められているから、困ったことになる。

 遺産分割が決定するまで、上場株式は法定相続人全員の共有状態となる。相続税申告は、期限までに未分割のまま行う。家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てれば、時間も費用もかかる。一つの選択肢だが、相続人全員が同意すれば、遺産の一部分割を行い、上場株式の売却を先行して現金化し、相続人に分配する方法もある。

 各相続人が被相続人の証券口座のある証券会社等に口座を開設し、株式を移管。または、代表相続人に他の相続人が株式売却の手続きを委任する。この場合、代表相続人が口座を開設し、その口座に全株式を移管。株式を売却した金銭を遺産分割協議に従って分配する。

 被相続人の遺言書通り、あるいは遺産分割協議で特定の相続人が上場株式を相続することになった場合は、その相続人が被相続人の口座のある証券会社等に連絡して、口座名義変更の手続きを行う。手続きに必要な書類は証券会社等によって異なるが、おおむね以下の通り。

・相続による株券名義書換依頼書等(証券会社等による所定の申請書)
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・遺産分割協議書または遺言書
・相続人全員の印鑑証明書(遺言書がある場合は不要)
・相続人全員の戸籍謄本(遺言書がある場合は不要)

 なお、2009年1月5日から株券電子化が開始されたが、それ以前の証券保管振替機構に預託されていない上場株式については、開設された口座を「特別口座」という。特別口座の株式も、相続人の証券口座へ株式を振り替える方法で相続できるが、それを売却できない場合がある。証券会社への確認が必要だ。

 また、被相続人保有の古い株券が見つかった場合、株の未受領配当金には時効があることにも注意したい。民法では10年と定められているが、証券会社の定款によってはそれより短く設定されていることもある。タンス株が発見されたら、発行会社への確認をおすすめする。

 上場株式の配当等を確定申告していた人がその年の申告を行わずに亡くなった場合、相続人が被相続人に代わって「準確定申告」を行う。相続人が複数名の場合、原則として相続人等が連名で申告する。代表相続人が行うこともできるが、還付金を受け取る場合は委任状が必要となり、準確定申告の内容は他の相続人等に伝えなければいけない。

「準確定申告」の期限は相続開始から4カ月と短い。怠ったり、申告漏れがあったりすれば、もちろん税務調査の対象となる可能性があり、加算税や延滞税のペナルティーが課される。なお、「準確定申告」はe-Taxでも行える。

 上場株式は、相続財産評価の目安が4つの基準から選択できる。とはいえ、相続発生から相続後の納付期限までの間にも価格が変動し、リスクが大きいため相続後の株価の下落に備えて売却されるといったケースも多い。

 そのため、金融庁は16年度の税制改正要望から「上場株式等の相続税評価の見直し」案を提出し続けているが、22年度税制改正大綱でも見送られた。17年度税制改正では、上場株式等による相続税の物納要件が緩和されてはいるが。今後の税制改正にも注目したい。