象や孔雀を輸入。好奇心旺盛な敏腕将軍、8代将軍・吉宗

 吉宗という人は、和歌などの伝統的学芸にはあまり通じておらず、儒学などの学問にも強い関心をみせなかった。ただその分、じっさいに役立つ実学には絶大な興味を持っていた。朝鮮人参や甘藷、櫨(はぜ)やさとうきびといった新しい作物の栽培を積極的にすすめたり、自ら天候調査や米相場の研究をおこなったりしたのだ。

 外国にも強い関心を抱き、「これまで輸入を禁止されていた洋書」のうち、キリスト教に関係のない漢訳洋書の輸入をみとめ、自ら外国の本を取り寄せては、天文学・地理学・暦学・数学・医学などを学んでいった。やがて、漢訳された洋書ではなく、直接、ヨーロッパの文献の知識を得たいと思い、腹心の青木昆陽と野呂元丈にオランダ語の習得を命じている。

 また、アラビア馬や唐馬を輸入したり、馬術師ケイズル(オランダ人)を招いて、富田又左衛門に西洋馬術を習得させたりした。輸入したのは馬だけではない。有名なところでは、象がある。吉宗はどうしても象が見たいと中国の商人に打診し、ついに今のベトナムから二頭の象を輸入することに成功。象は七歳の雄と五歳の雌で、象使いのベトナム人二名をともなって長崎に上陸した。このほか西洋犬、麝香(じゃこう)猫、インコ、七面鳥、ダチョウ、孔雀、九官鳥など外国の珍しい動物や、胡椒や椰子の樹などの植物も吉宗が注文したことがわかっている。

 このように吉宗は新しいものを好む傾向があり、そうした資質ゆえに改革を成功に導くことができたのではないかと思う。