DXの成功を占うための「6つの質問」

 私が代表を務めるコンサルティングファームのOXYGY(オキシジー)では、DX成功のためによく6つの問いを立てている。

「なぜ、なんのためにDXが必要なのか?(取り組まなければどうなる?)」
「達成したいのはどんな状況か?(事業価値や存在意義のレベルで)」
「顧客自身も言語化できていない、真の声を聴けているか?」
「取り組みに優先順位をつけ、やめるべきものはやめているか?」
「推進に効果的な体制は構築できているか?」
「組織・人・文化の面にも対処をしているか?」

 例えば、ドイツの自動車会社ダイムラー(今年2月1日にメルセデス・ベンツ・グループに社名変更)は、2019年5月に非ドイツ人のCEOを選出し、同年9月には内燃機関によるエンジンの開発中止を発表して、EVへの資源集中を宣言した。

 同じくドイツのテクノロジー企業シーメンスは、DXでは著名になった「デジタルツイン」の中心的推進企業として、07年から約100億ユーロ(1兆3000億円)を投資して、「もはや製造業ではない」を体現している。

 世界で最も大きい食品メーカーであるネスレは、食文化や嗜好(しこう)性を乗り越えて、世界中で事業を展開している。そのために、リーダーシップチームは以前から多国籍であることが当たり前となっている。

 こうした企業に共通するのは、「D」そのものではなく、「D」により何が可能になるかという世界観を持ち、その世界観を実現するために会社を変革させることにエネルギーを使っていることだ。これらの企業は、健全なリスクを伴う意思決定を行い、メリハリのある資源投下と、失敗を恐れずにむしろそれを学習機会とするような企業風土を醸成して、企業の変革を進めてきたといえる。