ロシアによるウクライナ侵攻が始まって、間もなく2カ月となる。民間人にも甚大な被害がおよぶ中、いまだ戦闘状態が続いているが、ロシアにはこの侵攻を支持する人も多いという。ハーバードビジネススクールのジョセフ・バダラッコ教授は、その背景に「過去の二つの戦争」が関係していると指摘する。どういうことなのか。また今回の侵攻を避ける方法はあったのか。プーチン大統領の思惑と、各国のリーダーの動向について分析してもらった。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
※インタビューは2022年4月13日(日本時間)に実施。
プーチン大統領が
「ネオナチ」の言葉を用いる目的とは
佐藤智恵 バダラッコ教授は長年、ハーバードビジネススクールの人気講座「モラルリーダー」で戦時におけるリーダーシップについて教えていますが、今般のロシアによるウクライナ侵攻をどのように分析していますか。この戦争に大義はあるのでしょうか。
ジョセフ・バダラッコ ロシアによるウクライナ侵攻に大義はあるか。答えは明白です。ロシアによるウクライナ侵攻は不法行為です。そこに何の正当性もありません。ロシアが軍事侵攻を始めたこと自体が間違いですし、その後の民間人への攻撃は到底、許されるものではありません。
佐藤 ロシアによる軍事侵攻は、正戦論や国際法で定める戦争のルールに反していると思いますか。
バダラッコ そう思います。ただ戦争のルールを無視しているだけなのか、違法だと知っていながらあえて民間人を攻撃しているのかは分かりませんが、もし後者だとすれば最悪中の最悪です。ロシアによるウクライナ侵攻は戦争のルールに反する行為であり、道徳的な見地から見ても許容できるものではありません。
佐藤 プーチン大統領はウクライナ侵攻の大義について、「ネオナチの脅威からロシア国民を守るためだ」と主張しています。「ネオナチ」や「ナチス」という言葉を多用する目的は何だと思いますか。