元々、資産運用業界にとって「インフレ対策」は、「老後不安」と並んで資産運用の必要性をアピールする上で有効な「二大商材」のうちの一つだった。

「今はまだデフレですが、将来インフレが来る可能性は大いにあります。そうなると、あなたのお金の価値が下落して大変なことになります。銀行預金にお金を置いてもほとんど増えません。資産運用で将来のインフレに備えましょう…」といった話法で運用商品を売ろうとする。

 しかし、これまで長年デフレないし、ほぼゼロインフレだったために、「銀行預金でもそう困らない」状況が続いていて、商材としてのインフレ対策は冴えなかった。2019年の「老後資金2000万円」問題などを捉えた「老後不安」一本槍のマーケティングが続いていた。

 ところが、ここに来てにわかに物価上昇が生じてきたので、「インフレ対策として資産運用」という連想が働き出した。

 加えて、インフレの原因の一つでもあるが、円安が進んできたことで外貨建ての運用商品を勧めやすくなっている。

 インフレ対策として資産運用をするべきなのだろうか。そうだとすると、どのような運用がいいのだろうか。

インフレ対策としての資産運用は
「短期的には」疑問

 例えば、外貨預金や外国株式で運用する投資信託への投資などで資産運用を行うことは、今後の物価上昇対策として効果的なのだろうか。

 筆者は、「短期的には」お勧めしない。ここで言う「短期的には」とは、向こう1年程度で、物価上昇を上回る成果を上げようとするような意図を指す。

 先行きを少々考えてみよう。