JR西日本が昨年導入した
ブラケットハンドリング車

 JR西日本はコロナ以前から保守作業の労働環境改善に取り組んできた。保守作業は主に深夜に行う上、土休日の休みが取りにくいため、ただでさえ人員の確保が困難というが、少子化でさらなる労働力不足が予想されることから、終電時刻の繰り上げによる作業時間の拡大や作業の機械化、設備のシンプル化を進めることで、保守作業の安全性向上と省力化を図ってきた。

 特に架線や電化柱など電気設備のメンテナンスは高所で重量物を扱う作業が多く、感電や墜落など労働災害のリスクが大きいため、機械化が急務であった。JR西日本が昨年導入した「ブラケットハンドリング車」は、架線を支えるために電柱に設置される重さ60~100キロのブラケットを高所まで運搬するために、鉄道業界では初めてロボットアームを採用した保守用車両である。

 ただ、ブラケットハンドリング車と空間重作業人機は作業の機械化という目的こそ共通しているが、性質は全く異なる。

 ブラケットハンドリング車はロボットアームに取り付けられた3Dカメラが作業空間を認識し、障害物を回避しながらブラケットを運搬する。つまり人に代わって特定の作業を行う自動化された専用ロボットだ。これに対して空間重作業人機は、人間の操作によりさまざまな作業に対応可能な汎用人型重機である。JR西日本が公開した実演動画では、部品の運搬や塗装、木の伐採などを行う様子が公開された。

人型ロボット,汎用人型重機,空間重作業人機,多機能鉄道重機,日本信号,人機一体写真提供:JR西日本

 ロボットは人型であるほうが望ましいのだろうか。人機一体代表取締役社長の金岡博士は「人型ロボットを作っている人たちは合理性をいろいろと言いますが、外部的な要因から見れば人型の方が合理的ではありません」と説明する。

「例えば人と同じ環境で作業できるので人型のほうが合理的だ、みたいな話がありますが、それなら腕が4本あってもいいわけで、足が2本である必然性もない。むしろ作業に最適化するのであれば人型でないほうがいいケースが多いかもしれません。コンピューターが勝手に作業してくれるような自動自律ロボットであれば、これまで人がやっていた作業を置き換えるにしても、人型をしている理由は全くないと思います」