松井秀喜氏や中村憲剛氏に学ぶ、「他者を意識せずに勝つ」コントロール思考法野球の松井秀喜氏やサッカーの中村憲剛氏が実践した、「他社を意識せずに勝つ」コントロール思考法とは

運動と脳やメンタルとの関係を解き明かし、発達段階の子どもから働き盛りの大人まで、より良い人生を送るための運動の効用について紹介する本企画。今回は、7年間の商社生活を経て、デンバー大学大学院でスポーツ心理学を学び、現在、中央大学でスポーツ心理学の研究を続けながら、プロアスリートやビジネスリーダーに対して、最先端のメンタルトレーニングを提供する伴 元裕氏(NPO法人Compassion代表理事)にインタビュー。前回に続き、スポーツに携わるジュニア期の選手の自分の体格への向き合い方、また、指導者はじめ大人との向き合い方について聞いた。そこにはビジネスパーソンも取り入れたい思考法があった。(取材・文・撮影/編集者・メディアプロデューサー 上沼祐樹)

「コントロールできるもの」に
集中した松井秀喜氏の成功法則

 選手個々が様々な情報をキャッチしやすくなった昨今、指導者との意見の食い違いが出てくるケースも散見される。特に集団スポーツでは、自身が試合に起用されないことで軋轢が生まれることも。伴氏も多くのアスリートからこういった相談は受けるという。この壁について、どのように向き合うべきなのか。元メジャーリーガー、松井秀喜氏の「自分でコントロールできないことは何かを認識し、それに囚われないことが大事だ」というコメントを引用して、伴氏が思考法を教えてくれた。

「日本人選手で唯一、ワールドシリーズMVPを取った松井氏。大舞台でも活躍できる理由を記者に聞かれ、『自分にコントロールできること・できないことを分けて考えている。その上で、できないことに関心を持たない』と話しているんです。

 大事な場面でホームランを打ったり、勝ったり、優勝したりするなどの結果は、アンコントロールな部分。逆にコントロールできるのは、自身の思考や行動のみ。具体的には、相手を分析したり、仲間とコミュニケーションを取ったり、ホームランを打つために最善の準備をしたりすること。今、置かれた状況でコントロールできることを特定し、それらに集中することが大事ということです。

 これはプロセス思考と呼ばれていて、不必要な不安や焦りを軽減し、実力を遺憾なく発揮する上で極めて重要な考え方です。松井氏はこの思考について、プロ野球入団当初から話しているんですよね」