脳科学的な天職は「物語をつくる」仕事
加藤:そんな須田さんの天職として、物語を紡ぐお仕事を僕は是非オススメしたいと思います。たとえばドラマの脚本とか。演じるだけじゃなくて、企画を立てて実際に作っていく。そういう能力が、今後生まれてくる気がします。
須田:えー、絶対無理です!
加藤:今は無理だと思います。なぜかというと、まだ情報やアイディアがバラバラになっているから。でもこれをつなげられるようになると、「こんなふうに展開したら面白いんじゃないか」と、ふっと浮かんでくるようになると思いますよ。
須田:今の通り書き出すことを続けていたら、そういう閃きがくることもある、ということですか?
加藤:すでに、どんどんそこに向かっていると思います。あとは、須田さんにピッタリの商品があって、そのコマーシャルの仕事も合うような気がします。
須田:コマーシャルとなると、容姿がともなっていないと……。
加藤:モノの宣伝において大事なのは容姿じゃないですから、メッセージ力ですから。世界中の有名ブランドに出ているモデルさんでも、綺麗なだけじゃなくてメッセージ性があるんですよ。その人が持っているメッセージに、ブランドが乗っかっているだけ。
須田:メッセージ力を伸ばす方法はあるんですか?
加藤:今やっているノートを続けていけばいいと思います。結局、何が一番人の心に響きやすいかというと、他の人がやらないヒストリーを持つことこそが、最大のメッセージになるんですね。それは決して宇宙に行ったことがあるとかそういう特別なことではなくて、自分なりの考え方、見方があるということ。あるいは、自分なりのこだわりがあること。そういったことが強いメッセージ性になってくるので、自分を大事に生きることが何より有効だと思います。
須田:じゃあこのままいくと、あるときふっと、物語とか閃きが出てくる瞬間が訪れますか?
加藤:多分、すでにそういう脳をある程度準備できていると思います。あとは、やるかやらないかだけじゃないかな。
左利きと右利きの「読む力」の違いとは?
須田:でも私は、文章を読むのがすごく遅いんですよ。これは左利きとは関係ないかもしれないんですけど、漫画でも「うわあぁぁぁ」というセリフがあったら、「あ」の数を数えてちゃんと心にストンと落とさないと、次に行けないんです。
加藤:本はどうやって読んでいるんですか?
須田:子どものときは、そんなふうに一語一句飛ばさずに読んでいたら、いつも学校の読書時間で一人遅れたり、課題図書を読み終わらないうちに感想文を書く日が来てしまったりしていて。これは困るなと思って、大人になってから身につけた方法が、目次でときめいた言葉を読みに行く、という読み方なんです。そうすると事前に読みたい部分をチャージできているので、スッと読みに行けるようになりました。
加藤:僕の読み方と似ていますね。僕も目次を見て、感覚的にこの本はこういうメッセージなのかな、というのを一回自分の中に落としてからじゃないと、文章が頭に入ってこないんですよ。どのように目の前の文字と関われば脳が働いてくれるか、常にそのことを考えていますね。
須田:分かります。だから新聞はすごくありがたいなと思いますね。事柄の大きさを字体とか記事の大きさで示してくれているから。そうするとどう読めばいいのか事前に分かって、頭に入ってきやすくなるんですよね。
加藤:左利きは右脳の理解系脳番地で世の中を見ているところがあるので、自分の脳が理解しているかしていないか、ということにものすごく敏感なんです。
須田:たしかに、理解していないのに無視して進もうとすると心がガタガタってなります。でもそれは、右利きの人も同じではないんですか?
加藤:右利きの人とは理解の質が違うと言いますか。たとえば赤ちゃんのときって、「これはお母さんだ」と言葉で分かっているわけではないじゃないですか。優しくされたり愛されたりして、その感覚を脳細胞が受け取って、何となくこれがお母さんというものだと感覚的に認知しているわけですよね。その後、言葉を覚えていって、「あれはお母さんの愛情なんだ」と言語化できるようになるわけです。
それが本来の脳の仕組みなんですけど、右利きの人は左脳の言語系の脳番地がどんどん発展していきますから、言葉を習得するにつれ、その感覚的な認知力がどんどんなくなって、埋もれていくんです。言葉で表されたものが全て事実、真実になっていく。ある意味、全部フェイクニュースか、本物か区別がつかない知識が蓄積していく感じです。
須田:感覚的に「これは真実だ」、「そうじゃない」と掴みにくくなるということですか?
加藤:そうです。でも左利きの一部の人は、その感覚認知が脳の仕組みとして残り、そのまま成長していく。そして大人になってからも、使いこなせないまでも、無意識に自然に使っていたりするんです。須田さんは、そういったタイプの脳の持ち主なのかなあと思いました。だから物語を作るなど企画立案する人になるかもしれない、と予言したんですけど。せっかくだから、秋元さんのもとで修業したらいかがですか?(笑)
須田亜香里の「豊かな才能」
須田:ギターを始めたことで「作詞をやってみたら?」と言われることが増えたんです。でも、どうしても恥ずかしいんですよ。たしかに感覚を書き綴るノートは続けていますけど、それはあまりに感覚過ぎるというか。ちょっとでも抱いたモヤモヤ感を全て書いて、そのノートの中で紐解いているんです。なぜイライラしたのか、一つ一つ紐解いて答えを出そうとしている。だからあまりに生々しくて、人に見せられないんです。
加藤:結論を導く方法には2通りありまして。それは演繹法と帰納法と言うんですけど、須田さんがノートでやっているのは帰納法ですね。複数の事実や事例から共通点を導き出し、それを繋げて結論を得る、というもの。もともと感覚的にものごとを理解する傾向が強いので、そうやって推論的な思考力を鍛えているんじゃないかと思います。ある意味、すごく良い脳トレだと言えます。今は書いたものを見せられないかもしれないですけど、いつかバラバラのものをつなげる能力が覚醒したら、また変わってくると思いますよ。
須田:もしかしたら外に見せられるようなノートを書くようになってくるかもしれない、と。
加藤:ええ、徐々にそうなると思います。今日こうやってお話をさせていただくと、すごく豊かな感覚をお持ちだと感じました。まだまだ潜在していて開花していない能力がある気がするので、これからがさらに楽しみですね。
須田:いっぱい褒めていただいて嬉しいです。いつか覚醒するのを楽しみに、ノートを書き続けたいと思います。
(本記事は2023年5月12日までの期間限定公開です)
誕生日:1991年10月31日、血液型:A型、出身地:愛知県
2009年11月にSKE48第3期生としてメンバーに加入。現在はSKE48チームEリーダーを務める。2016年・2017年の選抜総選挙では2年連続「神セブン」に選ばれ、今年2018年には遂に2位の座を獲得。握手会での神対応が話題で「握手会の女王」とも呼ばれている。 また、持ち前のトーク力でバラエティやワイドショーに出演。その他にもラジオや新聞連載等、SKE48の中心メンバーとして多方面で活躍中。
ソロライブ開催決定 あかり”も“のぞみ”も30周年! 須田亜香里ソロライブ名古屋公演supported by JR東海
●開催日時 5月20日(金)
●場所 名古屋マリオットアソシアホテル タワーズボールルーム
左利きの脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。
株式会社脳の学校代表。昭和大学客員教授。発達脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニングの提唱者。
14歳のときに「脳を鍛える方法」を求めて医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700ヵ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD(注意欠陥多動性障害)、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後は、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、子どもから超高齢者まで1万人以上を診断、治療を行う。「脳番地」「脳習慣」「脳貯金」など多数の造語を生み出す。InterFM 897「脳活性ラジオ Dr.加藤 脳の学校」のパーソナリティーを務め、著書には、『脳の強化書』(あさ出版)、『部屋も頭もスッキリする!片づけ脳』(自由国民社)、『脳とココロのしくみ入門』(朝日新聞出版)、『ADHDコンプレックスのための“脳番地トレーニング”』(大和出版)、『大人の発達障害』(白秋社)など多数。
・加藤プラチナクリニック公式サイト https://www.nobanchi.com
・脳の学校公式サイト https://www.nonogakko.com