米国株低調で「押し目買い」信者が試練にEMIL LENDOF/THE WALL STREET JOURNAL

 今年は米株式市場が乱高下しているため、個人投資家の間で人気が高い戦略「押し目買い」が加速度的に増えた。主要株価指数が急落したことで、こうした投資家の決意が試されている。

 米国株が5日に年初来で最大級の下げを記録すると、個人の買いが殺到し、1日としての購入額が過去最高に達した。調査会社バンダ・リサーチが2014年に集計を開始したデータによると、3月は個人の投資総額が月間で過去最高となり、4月も米国株には大量の資金が流れ続けた。

 今年の売り局面で一貫して見られる個人の押し目買い意欲は、個人投資家の耐久力が今のところはアナリストなどの予想以上に強いことを示している。昨年は株式市場が急騰する中、個人投資家が小さな押し目をどんどん拾ったことで、S&P500種指数は最高値を70回更新し、流れに加わった投資家は見返りを得ることができた。

 今年はS&P500種指数が16%安と、約100年ぶりの低調なスタートとなっている。ナスダック総合指数は26%安に沈む。米国のインフレ率は40年ぶりの高水準にある。米連邦準備制度理事会(FRB)は積極的な金融引き締め局面に突入し、5月には2000年以来となる大幅利上げに踏み切った。その結果、米経済がリセッション(景気後退)入りするのではないかとの懸念が高まっている。ダウ・ジョーンズ・マーケット・データによれば、これまでの景気後退期には株価が平均で29%も下落している。

 過去2年間に猛烈な人気を誇った取引の一部は早くも廃れている。多くの投資家は割高なIT(情報技術)株に対する興味を失った。昨年急騰した新興上場企業株は、現実的な価格に戻った。米著名投資家キャシー・ウッド氏の旗艦ETF(上場投資信託)である「アーク・イノベーションETF」といった投機性の高い資産クラスは価格が急落した。

 こうした潮流の変化をよそに、個人投資家の多くは押し目買いのチャンスに恵まれていると話す。「歴史が示しているように株価はいずれ上昇する」という単純な理屈からだという。

 ゴールドマン・サックス・グループによると、個人投資家は3月末にかけて米株式ファンドに1140億ドルを投じた。S&P500種指数が直近高値から10%以上下落し、調整局面に入ったというのにだ。これは過去20年間の大半にわたって続いた個人投資家の戦略が転換したことを意味する。S&P500種指数がこれほど下げた場合、個人投資家は、直近高値を付けた後の12週間に株式を100億ドル程度売却するというのが一般的だ。バンダ・リサーチによると、今回は3月だけで個人投資家による米上場株・ETFの買いが約280億ドルの純増となり、単月での過去最高となった。4月も244億ドルの純増だった。5日はS&P500種指数が3.6%安と急落する中、個人投資家の株式・ETF買いは26億ドル近くの純増となり、1日の買越額として過去最高となった。