米国株「円安メリット」がリスクに変わるドル円レートの分水嶺は?Photo:PIXTA

円安が止まらない。ドル円は3~4月に115円前後から130円に迫る水準にまで上昇した。円安が日本にとってプラスかマイナスかはさまざまな論点がある。しかしこの円安は米金利上昇を主因とするもので、日本側で動かせる余地は限られる。いずれ米金利がピークに達し、米景気・インフレに鈍化観測が出ると、先行的に米株が下落し、ドル円の反落を伴うだろう。中期的に警戒されるこの転換へ、投資家はどう臨めば良いのかを考える。(田中泰輔リサーチ代表 楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー 田中泰輔)

今回の円安は米金利上昇に
伴う循環現象

 円の対ドル相場は1カ月強で115円から130円近くへ急落した。相場が大きく動き、高値・安値を更新する都度、ニュースのヘッドラインを飾るのは、いつものことだ。

 円安が126円、127円…、130円と進む度に「新安値」、「○年ぶり安値」と騒がれる。円安が止めどなく進むかの心証が強められ、さまざまな円安論調が飛び交い、大変なことが起こっているかと不安も駆り立てられやすい。

 筆者は、今回の円安を、主に米金利上昇に伴う循環現象と解説してきた。米金利がピーク圏に入り、景気・インフレに鈍化が見込まれる段階になると、株価が先行的に下落し、ドル円も急反落する循環的巡り合わせが、今後の基本コースとしてイメージされる。

 要は、日本側の事情ではなく、米国側、それも主に金利展開次第の循環変動と割り切って処置するのが妥当な相場展開と判断される。

 ところが、円安論調にはさまざまなものが混在する。日本は貿易赤字の拡大と円安がスパイラルとか、日本の衰退を映して50年来の実質円安が進行中などと言われると、とてつもない日本売りが進行中と思えるかもしれない。「だから今こそ海外に投資すべき」と困った推奨をする金融業者の「専門家」も見受けられる。

 しかし、日本からの投資景観がかなり危うい様相へ変わっていく水準にドル円レートは迫りつつある。

 次ページからその水準を提示するとともに、その理由を解説する。