米国では急速な金融引き締めを受けて株価のバリュエーションが低下し、株価も下落した。しかし、すでに妥当な水準にまで低下しており、堅調な企業業績を背景に反転に向かうだろう。一方、日本では企業の価格転嫁が進まず経済の先行きは不透明。こうした状況下で上昇が期待できる企業はどこかを分析する。(クレディ・スイス証券株式会社 プライベート・バンキング チーフ・インベストメント・オフィサー・ジャパン〈日本最高投資責任者〉 松本聡一郎)
金融引き締めへの転換を
急ぐ欧米の金融当局
新しい秩序への転換が世界で進行している。ロシアのウクライナ侵攻を通じた価値観の対立が先鋭化する状況の下で、2022年の見通しで「大いなる転換」と表現した変化は今、一段と加速しているようだ。
世界経済はパンデミックからの回復過程にあり、サプライチェーン混乱の収束や経済活動再開の動きは決してスムーズに進んでいるわけではない。物価上昇は、ウクライナ侵攻の長期化でそのピークアウトの時期が後ろ倒しになっており、欧米の金融当局は金融政策の引き締めへの転換を急ぎ、インフレ圧力の抑制への取り組みを強めている。
パンデミックからの経済の回復の過程で、世界は東西冷戦終結以降初めて、国連常任理事国間での本格的な安全保障上の対立の深化、インフレ率上昇と本格的な金融政策の引き締め転換という事態を経験している。
マーケットは、この相次ぐ初めて経験するような事態を消化していくのに、かなり苦しんでいるようだ。このため市場センチメントを表す指標は、金融危機の時と同じような水準まで落ち込んできている。
このセンチメントの悪化は、近い将来の経済的な苦境を示唆しているのだろうか。
次ページからその答えを探ってみよう。