メンタルの可視化が勝敗を分ける?サッカーチームがデータ活用で掴んだ手応え

「プレッシャーのある中でも、その影響を受けずに実力を発揮できる能力のことをメンタルタフネスと言います。一般的に緊張や不安を感じているときに、人の意識は飛び回りやすくなります。これは意識がパトロールして身の危険がないかを判断しようとする防衛本能の一種です。

 意識が飛び回っていると、本来集中すべきタスクへの意識が散漫になり、高いパフォーマンスが発揮しにくくなるんですね。このOmegawaveを使うと、意識の動きが計測できるので、そこで調整していく取り組みですね」

 実際にユースの選手を計測すると、最初は意識が飛び回っていたという。試合前に測定するのだが、自身のプレーをイメージし切れていなかったり、準備を怠っていたりすると、脳波の大きな揺れを観測する。

「波形がこれほど揺れていると、パフォーマンスの好不調はギャンブルみたいなもの。稀にファーストタッチがうまくいって自信をつけ、うまく試合に入っていけるケースもありますが、ここを安定させることが重要です」

意識が飛び回らないために
結果ではなく過程の整理が必要

メンタルの可視化が勝敗を分ける?サッカーチームがデータ活用で掴んだ手応え

 では、具体的に何をするか。「絶対に勝つ!」などと闘争心を煽るようなことはすべきではない。伴氏が準備をしたのは、「結果」ではなく「過程」の整理。たとえば目の前の試合を2-0で勝利しなければいけないとき、それにふさわしいプレーは何なのかを、各選手がひとつずつ整理していく。ピッチの中での役割と、そのための行動を明確化するのだ。また、Omegawaveでの計測中は寝ている必要があるのだが、選手らはその時間に瞑想しながら、集中力のトレーニングに充てた。

「『勝つために僕はこのプレーをする』というところまで、まずは腹を決めさせるんです。それができたら、『他にはどんな想定外がある?』と、思い通りにいかなかった場合の行動指標も整理します。状況に応じた行動のイメージが持てると、随分と安定してきます」