運動と脳やメンタルとの関係を解き明かし、発達段階の子どもから働き盛りの大人まで、より良い人生を送るための運動の効用について紹介する本企画。伴 元裕氏(NPO法人Compassion代表理事)は、7年間の商社生活を経て、デンバー大学大学院でスポーツ心理学を学び、現在、中央大学でスポーツ心理学の研究を続けながら、プロアスリートやビジネスリーダーに対して、最先端のメンタルトレーニングを提供している。コーチングのプロである伴氏に、サッカー・ファジアーノ岡山のユースチームに実施しているテストについて聞いた。(取材・文・撮影/編集者・メディアプロデューサー 上沼祐樹)
フィジカルデータと同等に
大切なメンタルデータ
スポーツを取り巻く環境は日々、進化している。昨今、デジタルツールが現場に導入され、フィジカルデータが可視化されたことで、プロチームでのトレーニング方法が変わりつつある。全てのトレーニングを全員で均等に行うのは非効率とされ、個々人に合ったメニューが開発されるようになったのだ。
またこのデータから、日々のコンディション調整も可能だ。こういったフィジカルデータは、選手のパフォーマンス向上に一役買っていると言えるだろう。
一方でメンタルコンディションについては、長らく選手個々人が自身の経験則に基づいて管理してきた。データとして管理できなかったため、属人的な対応をするしか術がなかった。しかし、そこに風穴を空けるようなサービスが動き出している。フィンランドで開発された「Omegawave」を活用し、電通が仕掛けるSports Tech Tokyoと共に伴氏らがメンタルの可視化に挑戦しているのだ。
Omegawaveとは、脳波と心拍変動を測定するデバイス。スポーツ選手の客観的なデータを計測し、その数値から準備の進捗度合いや疲労度を確認できるという。個々の選手のコンディションを理解することで、かけられる負荷を判定してくれるのだ。今回、サッカーのJ2・ファジアーノ岡山のユースチームが、このデバイスを半年間活用。集中力の向上、感情のコントロール、緊張の水準の理解を目指した。