変えざるを得ないのであれば
先に仕掛けたほうがいい

松田 そうですね。我々があれだけ誇っていたウォークマンもiPodへ、そして今はスマートフォンに取って代わりました。若い頃、ウォークマンは憧れでしたよね。高くてなかなか買えませんでしたが。

笑顔の安宅氏Photo by Teppei Hori

安宅 欲しかったですよね。そのような日本製品はたくさんありました。でも、デジタルテクノロジーと共に、ほぼ消えてしまった。ですので、自動車もそうですよね。車のデジタル化なので。でも、これまでに起こったものを見ててもわかる通り、止められないですよね。

松田 世界の潮流もそうですし、マーケットが広がっているわけですから。どうしても日本におけるGXは、どこかやらされている感があるというか、「本当はやりたくないのだけれどやらなければならない」という、負の動機が伝わってくるんです。「GXは重荷だ」と勘違いしてしまっている。

安宅 はい。いずれにせよ変えざるを得ないのであれば、先に仕掛けたほうがいいだろうとは、とても思います。たとえばトヨタは分社して、「デジタルトヨタ社」をつくってほしいです。「DT」。「サステナビリティートヨタ」や「グリーントヨタ」も良さそうですが、「DT」のほうがかっこいいと思うんだけどな。

腕を組む松田氏Photo by Teppei Hori

松田 おもしろい発想ですね。たしかに、トヨタというメーカーの中でつくるよりも、まったく別の会社を立ち上げる。レクサスがかつてそうだったように。

安宅 そうすれば、トヨタの神話は担いだままですし、日本車の「絶対に壊れない」という信用も引き継げますね。

松田 レクサスはまさしくそうですよね。前回の方程式の、まさしく「アート」の部分だと思います。トヨタというイメージから離れ、世界の人がレクサス、レクサスと呼び始めました。トヨタというのは、故障の確率がものすごく低いというイメージを確立できていますので、そのブランドイメージを引き継いでEVの別会社を立ち上げ、しかも若手の社長を抜擢したら、たしかにおもしろいですね。大きな話題を呼んで、時価総額も一気に上がりそうです。