テック系人材が不足している今、日本がとるべき道とは?安宅和人と松田公太が語る「新たな日本」「変えざるを得ないのであれば先に仕掛けたほうがいい」Photo by Teppei Hori

タリーズコーヒージャパン創業者であり、現在、EGGS ’N THINGS JAPAN代表を務める松田公太氏。本シリーズでは、起業家であり元政治家の松田氏が、気になる人物に話を聞き(インプット)、その内容を広くビジネスパーソンへ共有する(アウトプット)。第1回のゲストは、『シン・ニホン』がベストセラーとなっている、慶應義塾大学教授でありZホールディングス シニアストラテジスト(前ヤフーCSO)の安宅和人氏が登場。全4回にわたってその模様をお届けする。GXと「負の動機」、車のデジタル化、中国とインドのしたたかな関係、テック系人材の確保…。安宅氏をゲストに迎えた対談(全4回)最終回となる今回も、日本の未来についての話は尽きない。(構成/ダイヤモンド社編集委員 長谷川幸光)

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「第2のテスラ」とも呼ばれるリビアン
新規上場直後に時価総額10兆円超え

松田氏Photo by Teppei Hori

松田公太氏(以下、松田) この対談の最後のテーマとして、「モデルチェンジ日本」の最初の提言でもある、日本の「GX」(グリーントランスフォーメーション)についてお話をできればと思います。最近は私の周りでEV車に乗り換える人がかなり増えてきました。

安宅和人(以下、安宅) ちょうど今日(※対談日)、テスラの車が納車されるんです。1時間後に。

松田 え、そうなんですか! タイムリーですね(笑)。テスラの他にも、昨年上場したリビアン(※米新興EVメーカーのリビアン・オートモーティブ)など、電気自動車(以下、EV)のメーカーが次々、登場しています。

 テスラはご存じのように、今のような不安定な相場の中でも、時価総額が100兆円を超えているわけです。トヨタが30兆〜40兆円。これに対し、新興メーカーのリビアンがいきなり上場して、10兆円を超えてしまった。あっという間にBMWなど既存の自動車メーカーを抜いてしまったんです。

 三菱自動車が米国イリノイ州にあった生産拠点を閉鎖したのですが、これを買い取ったのがリビアンです。EVの工場に置き換え、そこから一気に飛躍した。

 前回、話に出たように、日本はどうしてもゼロベースでスクラップ&ビルドを行うのを、経営者が嫌がる。政治家もそうですよね。「できない」と勝手に思い込んでしまう。

安宅氏Photo by Teppei Hori

安宅 そうですね。

松田 もったいないのは、もし三菱自動車が、EVへシフトしようとイリノイ州の工場を自社のEV工場に変えていれば、今頃は評価され、時価総額は跳ね上がっていたかもしれない。

 トヨタも、最近やっと、年間350万台を目指すと表明しましたが、少し前までものすごく消極的でした。すでにあれだけの数の工場が国内外にあるので、思い切って、2〜3割をEVへシフトすることもできたはずなのに、やはり出遅れ感は否めない。

 これは自動車業界に限ったことではなく、グローバル社会において潮流の変化に対する日本の感度の低さは、今直面しているひとつの大きな問題点だな、と思うんです。

安宅 これもデジタルショックですよね。日本があれだけ繁栄していたオーディオビジュアルの機器も、デジタル化の波が押し寄せてきたら、部品の組み合わせがメインになってしまって、世界で勝負できなくなってしまった。