「また、ドライアイを放置すると角膜が傷つきやすくなります。目に涙の膜が張られていない状態は、皮膚にたとえると表皮が一枚めくれているようなもの。そのため、少し風が吹くだけでも角膜に傷がついてしまうのです。角膜についた傷を治す過程で目が充血したり、大量の涙が出てきたりするのもドライアイの症状です」

 涙が出てくるなら乾燥も防げるように思えるが「質の悪い涙では、ドライアイの改善は見込めない」と平松氏。

「実はドライアイの患者さんは、涙の量が不足している人よりも涙の質が悪い人のほうが多いです。質の悪い涙はすぐに蒸発してしまうので、どれだけ涙が出ても目は乾いてしまいます」

 一方、質のいい涙は“ムチン”という粘度が高い物質や、良質な油分を多く含んでいるので、蒸発しにくいのが特徴だという。涙は量より質が重要なのだ。

「自分の目がドライアイか否かは、セルフチェックできます。目を開いたまま、まばたきせずに何秒耐えられるか試してみてください。約12秒間まばたきを我慢できない人は、8割の確率でドライアイといえる、という研究結果もありますね」

 また、12秒以上目を開けていると涙が出てくる人も、涙の質が悪く、ドライアイになっている可能性が高い。まずはセルフチェックから始めてみよう。

 生活に支障をきたすドライアイは「放置すると生産性の低下も招く」と、平松氏は指摘する。

「ドライアイは『実用視力』を下げる疾患です。実用視力とは、仕事や読書など、長い時間目を使うときに必要な視力のこと。ドライアイは長時間目を酷使すると、視界がかすんだり、ぼやけたりして、作業がしづらくなるのです。実用視力が低いと仕事の効率も悪くなり、一人あたりの生産性が年間4.82%低下するという報告もあります」

 健康診断の視力検査で1.0などの高い数値が出ても、それはあくまで瞬間的な視力。視力が高くても実用視力が低ければ、生産性が下がってしまうのだ。

涙の質を高めるために
積極的に取るべき食べ物

 多くの人が悩んでいる現代病・ドライアイに対処法はあるのだろうか。

「マスクがドライアイを悪化させている場合は、目に呼気が入らないような工夫をしましょう。鼻とマスクをピッタリつけて装着したり、マスクと鼻のあいだに細く折りたたんだティッシュを挟んだりすると、すき間がなくなって、目にかかる呼気が減らせます。また、エアコン環境下では、夏でも加湿器を置いて湿度を保つのが理想です」

 また、長時間のパソコン作業や動画視聴など、まばたきの回数が減る生活を送っている人は、60分に1度、5分ほど休憩して目を休めるよう心がけよう。