日本電産の半導体戦略が動きだした。元ルネサスエレクトロニクス幹部の半導体担当役員が中心となり、電気自動車(EV)向けモーターに使う半導体の安定調達網を再構築する。永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)が強調する「内製化」に向けて布石を打つ格好だ。果たして、自動車業界における「Tier1」の地位確保に向けて、トヨタ自動車グループのデンソーに対抗できるのか。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
半導体サプライヤー15社を前に
ルネサス元幹部が“戦略始動”を表明
「皆様とウィンウィンの関係を築きたい」
6月7日、神奈川県川崎市にある研究開発施設の集積地「新川崎」。日本電産の中央モーター基礎技術研究所内の「半導体ソリューションセンター」で、日本電産の半導体担当役員の大村隆司執行役員(当時、現常務執行役員)は、国内外の半導体メーカー15社の幹部に訴えた。
大村氏は元ルネサスエレクトロニクス出身のキーマンである。2月に日本電産に転じて初めて開催したこの半導体戦略説明会で何が語られるのか。業界の注目が集まっていた。
参加したのは、大村氏の古巣であるルネサスのほか、蘭NXP、独インフィニオン・テクノロジーズ、スイスのSTマイクロエレクトロニクス、三菱電機、東芝デバイス&ストレージ、日立パワーデバイス、ロームなど、日本国内に拠点を構える主要半導体メーカーの有力幹部。そのほとんどが、大村氏と交流を持つ“半導体人脈”のメンバーである。
半導体は日本電産のEV向け駆動用モーター(トラクションモーター)に欠かせない。その安定調達は、日本電産が将来的に自動車メーカーと直接取引する「Tier1(一次下請けサプライヤー)」としての地位を確保するための必須要件だ。トヨタ自動車グループのTier1として確固たるポジションを築くデンソーに対抗するためにも、日本電産と長期・安定的な信頼関係を築くことができる半導体メーカーのパートナーを探し出すことは重要な作業。同日の説明会に参加した15社は、その有力な候補になる。
冒頭の大村氏の方針表明は、日本電産の半導体パートナーの選定開始を告げる“号砲”となったのは間違いない。
次ページでは、日本電産が掲げる「新たな半導体戦略」の全貌を明らかにするとともに、半導体パートナーの選定方針や半導体メーカーの反応を取り上げる。