東芝から独立した大手半導体メーカーのキオクシアホールディングスが迷走している。昨年まで進めていた米ウエスタンデジタルとの統合交渉は棚上げとなり、2022年内での新規株式公開の行方も不透明な状況だ。果たして、水面下では何が起きているのか。特集『戦略物資 半導体&EV電池』の#5では、上場延期の真相を明らかにするとともに起死回生の一手に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
WDとの統合交渉は頓挫
水面下で再びIPO準備
もはや、迷走に迷走を重ねているとしか言いようがない。
大手半導体メーカーのキオクシアホールディングスが、米ウエスタンデジタル(WD)との統合交渉を開始したのは2021年春ごろのことだ。6~8月にかけて交渉は熱を帯びたが、昨秋までに議論は棚上げとなった。事実上、WDとの統合交渉は白紙撤回された。
手元資金に余裕のないWDはキオクシアとの統合を株式交換で行う計画だったが、同社の株価は21年6月の高値から下落の一途をたどった。WDの時価総額がキオクシアの企業価値を下回り、交渉を続けられなくなったというのが実態だ。
18年6月に東芝から独立したキオクシア(当時の社名は東芝メモリ)は、それから2年後の20年10月に予定していたIPO(新規株式公開)が延期になったまま今に至っている。
WDとの統合の道が閉ざされたキオクシアは、22年内のIPOに向けて準備を再開させたものの、いまだその時期は見通せないままだ。
韓国サムスン電子がリードする「NAND型フラッシュメモリー」業界の競争は激化を極めている。22年のNANDの価格は下落基調にあることから、現在のキオクシアの企業価値は、米投資ファンドのベインキャピタルが主導する企業連合が東芝から買収した当時の価格を下回っているもようだ。そのため、当初、巨額の売却益を見込んでいたキオクシアの株主がIPOに踏み切れないのだ。
このまま中ぶらりんの状況が続けば、空前の半導体産業拡大の波に乗り損ねる恐れがある。果たして打開策はあるのか。キオクシアの上場が遅れに遅れている真相を明らかにするとともに、起死回生のシナリオを探っていこう。