トヨタ自動車がEV(電気自動車)シフトを進めれば、真っ向からの対立が避けられないのが日本電産だ。すでに、エンジンを中心としたトヨタの系列部品メーカーは、EVの「心臓部」の覇権を巡って揺さぶりをかけられている。特集『絶頂トヨタの死角』(全15回)の#5では、トヨタと日本電産の暗闘に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
ルネサス元幹部ヘッドハントの裏にある
トヨタvs日本電産の暗闘の歴史
「われわれは、もともとルネサスを買収することになっていたのだけれど、あまりフェアではないやり方で(横やりが入ったため)買うことができなかったものでね」
1月26日、日本電産の永守重信会長が決算会見で、突如として過去の買収とん挫の恨み言を口にしたのは、トヨタ自動車グループを想定してのことだろう。
日本電産は、2016年初めまでルネサスエレクトロニクスの買収交渉を進めていたが、それが破談になった経緯がある。
同日、日本電産は、ルネサスで執行役員常務として車載半導体事業のトップを務めた後、ソニーグループに転じていた大村隆司氏を2月1日付で、副最高技術責任者・半導体開発担当として招き入れる役員人事を発表した。
このサプライズ人事の狙いについて聞かれた永守氏は、思わず攻撃的な本音を漏らしてしまった。それが冒頭の発言だ。
トヨタグループの“系列サプライヤー”を切り崩そうとする日本電産と、それを死守しようとするトヨタ。次ページでは、深い因縁のある両社が繰り広げる「EV覇権争い」の構図を解き明かしていこう。