私の目の前で報告書に目を通していくうちに、報告書をつかむ手がワナワナと震えていった浦部さんを見て、悲しい離婚のアシストになってしまったことに、私も仕事を忘れて涙ぐんだことが忘れられません。

アパートのある男性を見張る依頼
そこには男とパトカーが!

 打ちひしがれた表情の浦部さんと別れたその3カ月後に、またまた電話がかかってきました。浦部さんはとても焦った声で「なるべく早く今から送る住所に来てほしいんです!」と言って電話が切れました。たまたま予定が空いていたので、指定のアパートに行くとオートロック付きの玄関前で浦部さんが仁王立ちしていました。

 怒気をみなぎらせた浦部さんが、まくし立てるように説明してくれました。

「ここの102号室に誰か帰ってきたらすぐに教えてください!もし出かけたら尾行してください!なんとしてもその人物と直接話したいんです!お願いします!」

 言い終えると浦部さんは慌てて契約を結び、車でどこかへ走り去りました。私は急いで調査のパートナーを段取りして、2名体制での監視に入りました。

 それから5日後に、別件対応がある私に代わって張り込んでくれている調査員から電話がきました。

「先ほど男性が1人で102号室に入り、部屋の電気がついている状態です!」

 興奮気味に話す調査員に「気を張って見落とさないようにしてほしい」と伝えて電話を切り、すぐさま浦部さんに報告しました。そしてその約30分後、また調査員から電話がかかってきました。

「片岡さん!数分前に上下スエットの悪そうな人が102号室の裏庭から侵入して窓ガラスをたたいて、出てこい!って怒鳴ってます!あ!今パトカーがきました!」