「日本独自の『察する』文化とうまくマッチしたのだと思います。ゼンリーを使えば、友達がどこで何をしているのかがわかるため、その時々の最適なコミュニケーションを取ることができるからです」(同社広報)

 同社によると、日本のユーザーの平均年齢は20代半ば。「察する」風潮が、とりわけ若い世代の間で広まっていると指摘するのは、ITジャーナリストで成蹊大学客員教授の高橋暁子さんだ。

「SNSネイティブにあたるZ世代は、ネットを通して色んな人がいることを経験として知っています。なので、一つひとつのコミュニケーションにかなり気を使っているんです」

上の世代と「ギャップ」

 若年層に広がる「気遣い」文化は、他のSNSでも垣間見ることができる。

 たとえば、LINE。

 勉強が忙しくて返事ができないときは、ステータスメッセージに「低浮上」の文字を入れる。つながり続けることが当たり前だからこそ、相手を心配させまいと配慮する。ツイッターやインスタグラムでは、メインで使うアカウントのほか、趣味や目的ごとにサブアカウントを複数持つのが当たり前だという。

「時間や場面、情報を共有することについて、上の世代とのギャップが大きい」

 そう話すのは、Z世代やSNSに詳しいマーケターの福士和洋さん(25)だ。ハンドルネームを駆使し、匿名が前提だった大人世代と異なり、個人情報を公開することへの抵抗感は薄れていると説明する。

「危ないと思うかもしれませんが、アカウントに鍵をつけるなどして使い分けています。SNSとはいえ、自分が許可した人とだけつながるコミュニティーを作っています」

 さらに、この「使い分け」は友人間のコミュニケーションでも起きている。

「メッセージはもちろん、電話もすべてインスタを使います。LINEは公式の連絡手段というか。上司や顧問の先生とのやり取りには使うけど、友達との気軽な話から情報収集も含め、インスタで完結させる人が多いんです」(福士さん)

 群雄割拠のSNS時代。スマホの便利さを日々体感している年配層も、その「使い方」は若年層と乖離しているかもしれない。大人からみれば「むやみにつながりすぎ」、若者にすれば「効率よくつながっているだけ」。理解し合うのが難しいのは、いつの時代も同じだ。(編集部・福井しほ)

AERA 2022年6月27日号より抜粋

AERA dot.より転載