パナソニックが持株会社制へ
移行した本当の意義
2021年、パナソニックでは12年からトップを務めてきた津賀一宏氏から楠見雄規氏に社長が交代し、同時に持株会社制への移行を発表。今年4月にはパナソニックホールディングスへ商号変更した。社名変更といえば、ソニーも昨年4月、本社をソニーグループに変更し、各事業会社がその下にぶら下がる格好になった。両社のこのタイミングでの組織変更やパナソニックの社長交代は何を意味するのだろうか。
結論から言えば、両社とも歴史を紐解けば両社らしい意思決定だということだ。パナソニックは、日本でいち早く事業部制を実施し、事業部ごとに商売の責任を持たせることで、ミドルマネジメントや現場社員の士気を上げてきた。戦後の財閥解体の流れの中で、当時の松下は松下電器産業と松下電工に分かれたが、これも戦前に松下幸之助がつくった事業部が独立会社になった格好だ。
松下正治社長時代に始めた事業本部制も、松下が他社に先駆けて実施した組織形態であったし、現在までにビジネスユニットごとのカンパニー制を実施してきた。かつては持株会社制が禁止されていたので、言わばバーチャルに持株会社制を実施してきたのがパナソニックの歴史である。
今回の持株会社制への移行は、パナソニックの業務範囲の広がりと、コロナ禍をはじめとしたそれぞれの事業が直面している不確実性の高さから、全社戦略と個々の事業戦略を1つの会社の1人のトップが見ることが難しい状況になったということであろう。津賀社長への評価は、在任中の10年近くの前半と後半で大きく異なるといえる。前半は、特定の問題を抱える事業を切り離して、注力すべき事業に集中して経営資源を投入し、グループ全体のトップが個別事業へのてこ入れを行うことで、経営の改善をしてきた。
その後、全体のポートフォリオを考えた全社戦略と、個別の事業戦略の陣頭指揮を1人のトップが担う限界が見えてきたわけだが、これは津賀社長個人の資質や能力の問題ではないにもかかわらず、任期後半の氏の評価の低下に影響しているのではないだろうか。