デザインとは、課題を解決することである

 内容も少し紹介しましょう。

ロジカルシンキングでデザインセンスを磨く――『見るだけでデザインセンスが身につく本』『見るだけでデザインセンスが身につく本』
株式会社日本デザイン[著]
大坪拓摩[監修]
SBクリエイティブ

 デザインとは、イケてるもの、カッコいいものを作ること――と思っている人は多いのではないでしょうか? かくいう私がそうでした。本書はまず、そんな思い込みを否定します。「デザイン=課題解決」「デザイナー=課題を解決に導く人」と、はっきり定義されているのです。見た目をカッコよくすることではなく、課題を解決すること。それがデザインの目的なのです。

 アートとデザインという、混同されがちな二つの概念もすっきり説明されていました。デザインが「課題解決」なら、アートは「課題提起」だというのです。この整理に沿えば、アートの領域では「芸術は爆発だ!」でもよいのでしょうが、デザインはむやみに爆発させると課題解決が遠ざかってしまいます。目的とギャップが大きい表現はNGになることもあるのです。ふむふむ……。

 本書に掲載されている「デザインとアートの違い」という表には、この両者の違いが、端的にとても分かりやすく整理されているので、ここだけでも拡大コピーして貼り出しておきたいくらいです。

 デザインセンスは、後天的に磨ける――。これも、本書が一貫して訴えているテーマです。特に「デザインセンスはロジカルシンキングと似ている」という説明は、とても分かりやすいと思いました。

 ダーツの的を思い浮かべてみてください。デザインの目的は「課題解決」ですから、「課題という的」を射抜くのが「良いデザイン」です。そして、的の中心に近ければ近いほど「センスがいい」と評価されるのです。

「センス」というと、先天的で特別な才能みたいですが、「課題解決のためのロジック」だと考えれば、そうではないことが分かります。デザインにもフレームワークがあり、それを学ぶことで的を明確にし、ロジカルに中心に近づいていけば、センスは後天的に伸ばせるのです。