月経随伴症状により
年間4911億円の労働損失

 2013年に発表された、東京大学大学院医学系研究科の教授らの試算によると、女性特有の月経随伴症状が原因の年間の労働損失は約4911億円に上る。この数字を見れば、生理や更年期といった症状で、女性の活躍の場が大きく奪われてきたことがわかる。

「ヘルスリテラシーが高い女性のほうが仕事のマネジメントがうまくいくというデータもあります。生理や更年期障害などの症状を緩和するために、まずは自分の健康状態を把握し、フェムテックを活用することで、女性が活躍できるフィールドは広がっていくはずです。重要な仕事のときには、低用量ピルを使って生理を避けるなどの自己管理も有効です」

 当事者の女性に限らずとも、女性の健康状態について正しい知識を得ることで企業が受ける恩恵は大きい。

「『SDGsやダイバーシティに対応している企業は業績がいい』と言われますが、それと同じで、女性の身体への理解を深め、業務上の損失を減らす工夫をすることは、結果的に企業の成長につながるでしょう。実際、女性が多い職場の男性管理職が、女性の身体の問題について学ぶことで、社員からの信頼を獲得したという体験も耳にします」

 山田氏は「プライベートにおいても、女性の健康への理解があると、パートナーといい関係性を築きやすくなりますよ」と付け加える。

「健康意識が高い海外と比べ、日本のフェムテック市場はまだアーリーステージです。女性の体の悩みは『我慢するのが当たり前』というのは過去の話です。これからは自分の健康状態と向き合って、仕事、ひいては人生をマネジメントする意識が重要になります」

 毎日のタスクに追われ、自分の身体と向き合う時間がなかなか取れない人は多い。だが、これからの時代、健康に関する技術やサービスなどの知識をアップデートすることが、個人や企業に求められていくのだろう。