第2の原則 「進行中」の仕事を制限する

 限りある時間、という現実から目をそらす方法として、おそらくもっとも魅力的なのは、複数のプロジェクトを同時に進めることだ。

 あるプロジェクトが難しくなったり、不安になったり、つまらなくなったりしたら、そのたびに別のプロジェクトに切り替える。そうすると、表面的にはものごとをコントロールしている気分になれる。

 ただし、その代償として、大事なことはいつまでたっても終わらない。

 もっといいやり方がある。同時に進行する仕事の数を、削れるところまで削るのだ。マネジメント専門家のジム・ベンソンとトニアン・デマリア・バリーは、「進行中」の仕事を3つまでに制限することを勧める。もっとも重要な3つのことを選択したら、そのうちの1つが完了するまで他の仕事は一切やらない。どれか1つ仕事が終われば、空いた枠に別の仕事を入れてもいい(もしも行きづまったら、プロジェクトを放棄して枠を空けてもかまわない。大事なのは、始めたことを絶対にやり遂げることではなく、中途半端なプロジェクトがどんどん増えていくのを防ぐことだ)。

 こうやって「進行中」のタスクを制限するだけで、僕の仕事は驚くほどうまく進みはじめた。自分にできることが有限であるという事実から目をそらすのは、もはや不可能だった。やることリストから3つのタスクを選択するたびに、そこに入りきらないタスクのことをいやでも考えるからだ。

 それは厳しい現実だった。何かを選ぶときには、他のすべてを捨てなければならない。でもそれを直視したおかげで、すべてを同時にこなすという選択肢はそもそも不可能なのだとシンプルに理解できた。その結果、注意散漫になることなく、目の前のタスクにじっくりと取り組めるようになった。

 もうひとつ、うれしい効果がついてきた。仕事を手頃な大きさに切り分ける習慣ができたのだ。

「小さな単位に切り分けろ」というアドバイスはよく聞くけれど、いつもやろうと思うだけで実行に移せなかった。でも「進行中」の枠が3つしかなければ、必然的にタスクを小さくせざるをえない。「本を書き終える」とか「引っ越しを完了する」という大きなタスクを入れてしまうと、何カ月もそれ以外のことができなくなるからだ。タスクの単位は自然に小さくなり、短期間で無理なく達成できるようになった。

 全部いっぺんにやるのではなく、小さなことをコツコツと進める。僕はようやく、それを体で覚えることができたわけだ。