ピアノの音を浴びた瞬間に
物理学者になった

センゲ氏

 最後に、私が親しくしていたMITのヴィクター・ワイスコフという高名な物理学者の話をしましょう。

 彼はMITで「ヴィッキー」と呼ばれて、みんなから好かれる人気者でした。ある少人数のセミナーの時間中に、私が「何歳で物理学者になったのですか?」と聞いたら、彼は「3歳です」と答えたのです。

「ピアニストの母が演奏する時、ピアノの下に潜り込んでそれを聴いていた。私は全身で音楽のシャワーを浴び、音楽が私の体を振動させた」

「その瞬間、物理学者になったんだ」と。

 身体を通して、社会性の中で理解する――。今、世にある教育システムは、人を人間として成長させないまま、技術的なスキルのみを訓練しているものが多く存在しています。このことが私たちを苦しめてきました。世界は今も、こうした問題に悩まされています。

 しかし、人を人間として育てられるなら、人は、テクノロジーや技術を、もっと、よりよく使えるようになるはずです。今一度このことを理解し、教育のあり方を変えていかなければならないのです。