(1)大人の常識や願望を子どもに押しつけない
ーー子どもの才能を伸ばすために、親は何に注意しなければならないでしょうか?
富永:2つあって、1つは「大人の常識や願望を押しつけない」ことです。
先ほどのギフテッドの子どもの話は極端に聞こえるかもしれませんが、子どもの得意不得意には、大人が考える以上に大きな差があります。
子育てをしていて「なんでこんな簡単なことができないんだろう?」と感じた経験がある親は多いかもしれませんが、その一方で、同世代の友だちや大人ができないことを、いとも簡単にやってのける姿を目にしたこともあるのではないでしょうか。
さらに言えば、これは大人が子どもをリスペクトできるかどうか、という問題でもあると考えています。
例えば、親の願望だけで子どもの進路を決めてしまったり、自分と同じ職業についてほしいと考える親御さんもいるかもしれません。
残念ながら親の願望と子どもの得意分野が重なるとは限りません。子どもの個性を無理に矯正させようとすると、親も子どもも苦しくなってしまいます。
幼い子どもであっても、一人の人間として本当の意味で尊敬することができれば、その子どもの才能は開花していくと思います。
「ウチの子、ちょっとまわりと違って変わってるんです」という悩みを抱える親御さんも多いですが、子どもを本当にリスペクトできれば、きっと今よりも楽な気持ちで子育てに向き合えると思います。
(2)苦手なことを相手にしない
富永:もう1つは「苦手なことを相手にしない」ことです。
日本も少しずつ「子どもの才能を生かそう」という社会に変わってきています。
例えば、中学入試から大学入試まで「1科目入試」が増えています。つまり、得意なもので勝負できるような時代に変わってきているので、「苦手なことを相手にしない」ことは大事だと考えています。
また、子どもの個性を受け入れて、良い面を伸ばそうという学校が増えてきているので、子どもに合った環境を親が探してあげることも重要です。
ギフテッドという言葉で話すと、限られた子どもだけの話になってしまうかもしれませんが、どんな子どもにも個性があり、人それぞれ自分に合った学習方法や学習環境は異なります。
ですので、学校でも塾でも習い事でも、子どもに合った環境や指導者を見つけることは「親の最も大きな仕事」だと思います。
ひとりっ子の才能が開花するための条件
ーー親ができることは、得意なことを伸ばせる環境を見つけることなんですね。
富永:その通りです。今回『ひとりっ子の学力の伸ばし方』という本を出版することになったのですが、特にひとりっ子の場合、兄弟がいる家庭環境と違って、1人の子どもに時間も労力もお金も割くことができます。
そのため、親が子どもに合った環境を探し出して、子どもの才能が大きく開花するというケースが非常に多いです。
勉強でも、運動でも、何か習い事でも、子どもに才能があると感じたら、しっかりとした指導者を見つけることです。信頼できる指導者を探すことに時間をかけてほしいと思います。
くわえて、そのときに大事なのは、「最初からベストの環境は見つからない」 という認識です。時間がかかることを前提に、いくつもの選択肢を試していく必要があります。
早くから動いていれば、上手くいかないことがあっても修正がききます。最悪なのは、失敗を怖がって親が動かず、子どもの成長機会を逸することです。
子どもにとってベストな環境を見つけるには、行動しかありません。頭であれこれ想像している時間があったら動いてみて、フラットに色々と試してみることです。そうすれば、子どもの個性や才能が開花する場所が必ず見つかるでしょう。