特定分野で突出した才能を持つ児童、いわゆる「ギフテッド」と呼ばれる児童に対して、文部科学省が来年度から学習支援に乗り出す。子どもの才能を伸ばすためには、どのような教育が望ましいのか。親ができることは何なのか? この度『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)を刊行し、子どもの個性を活かす教育法で、開成、麻布、桜蔭、雙葉、筑駒、渋幕など、有名難関校に多くの生徒を送り出している進学塾VAMOSの代表・富永雄輔氏に、「ギフテッド教育」について話を聞いた。

【ギフテッド教育】特異な才能、困った行動、親は「子どもの個性」とどう向き合うべきか?Photo: Adobe Stock

「ギフテッド教育」が注目されはじめたワケ

富永雄輔(とみなが・ゆうすけ)
進学塾VAMOS代表
幼少期の10年間を、スペインのマドリッドで過ごす。京都大学経済学部を卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生・浪人生まで通塾する「進学塾VAMOS(バモス)」を設立。現在吉祥寺、四谷、浜田山、お茶の水に校舎を構える。入塾テストを行わず、先着順で子どもを受け入れるスタイルでありながら、毎年塾生を難関校に合格させ、その指導法は、「プレジデントファミリー」「アエラウィズキッズ」「日経キッズプラス」などでも取り上げられる。学習指導のみならず、さまざまな教育相談にも対応し、年間400人を超える保護者の受験コンサルティングを行っている。また各学校にも精通しており、中学校の紹介等をYouTubeで行なっている。自身の海外経験を活かして、帰国子女の教育アドバイスにも力を入れているほか、トップアスリートの語学指導、日本サッカー協会登録仲介人として若手選手の育成も手掛けている。著書に『ひとりっ子の学力の伸ばし方』など多数。

ーー文科省が来年度から、特定分野で突出した才能を持つ児童の支援に乗り出すことになりました。なぜ「ギフテッド教育」が注目されているのでしょうか?

富永雄輔(以下、富永):ギフテッドとは、何かある能力が飛び抜けて高い人のことを指します。以前であれば、いわゆる「天才」と呼ばれていたような存在です。勉強に限らず、運動、音楽、美術など、何か1つの分野において非常に際立った才能を持つ人のことです。

 アメリカやシンガポールをはじめ、海外ではギフテッドのための教育が進んでいます。日本の場合は、ギフテッドを支援する教育がこれまでほとんどなく、ギフテッドへの理解も浅いままでした。

 その結果、能力が高く、日本の一律な教育に馴染まない学生が、海外に流出してしまいました。また、外資系企業は、日系企業よりも遥かに積極的にギフテッド人材の獲得に動いています。

 ここ最近になって、こういった頭脳流出に対する危機感が高まってきて、文科省が動き出したという経緯だと思います。

ーー従来の一律教育では、なぜギフテッドを育てることが難しいのでしょうか?

富永:ギフテッドの子どもは、能力に大きな偏りがあることが多いです。例えば、数学は飛び抜けているけれど、コミュニケーション能力が低い。記憶力が異様に高いけれど、共感性が低い、といったようにです。

 私はVAMOSという塾をスタートして以来、公立の学校の一律教育では実現することが難しかった「子どもたちの才能や個性を伸ばす教育」に力を注いできました。