リーダー論に正解はありません。時代や年齢、率いる組織の業績や規模によっても求められる能力は異なります。ここでは、リーダー経験がほとんどゼロでダイヤモンド編集部の編集長になってしまった私が、わらにもすがる思いで手にしたリーダー本を紹介していきます。
『結果を出すリーダーはみな非情である』に『優れたリーダーはみな小心者である。』、はたまた『最高のリーダーは何もしない』など、一見すると矛盾していそうな5冊を選定しましたが、読んでみるとストンと腹落ちするものばかりです。
特集『編集長厳選!無敵のリーダーになるための5冊』では、これまでにない不思議な読書体験をお届けします。#4は『結果を出すリーダーはみな非情である』を紹介。管理職に求められる“死刑宣告”する能力とは?(ダイヤモンド編集部編集長 山口圭介)
中途半端に優しい上司は
「薄情な上司」でしかない!
『結果を出すリーダーはみな非情である』では、雑誌の編集部がケーススタディーとして登場するのですが、雑誌の編集長である身としては、そのリアルな設定にドキリとさせられました。
出版氷河期の雑誌業界において、部数を伸ばすための改革を断行するという設定。新しい編集方針では、グラフィックが得意な部員のスキルを生かす場がなくなるため、その部員の人事評価が低くなってしまう。そこで編集長がかわいそうだからグラフィックを入れようとすると元の木阿弥。皆が気持ちよく働くことができる「優しい意思決定」では、会社全体としては着実に弱体化してしまうーー。著者である経営共創基盤グループ会長の冨山和彦氏はそう指摘します。
さらに、社員一人一人の将来を考えた場合、無理やりにでも成果を出せる場を用意することが本当にその部員のためになるのか、真剣に考えるべきであり、かわいそうだからという「薄情け」がその部員の進歩を止めてしまうリスクがあると冨山氏。
中途半端に優しい上司は、結局のところ薄情な上司でしかなく、「あなたはこの分野でこれ以上の出世は望めない」といった“死刑宣告”を下すタフさを持つことこそ、ミドルリーダーにとって重要であると説きます。
同書の本文では、部下に対して厳しい通告をする際にリーダーに求められる能力、鉄則をお届けします。加えて、以下のことについても解説していきます。
・部下評価で「成果」と「能力」を混同してはいけない理由
・見事な負けっぷりができる社員の将来が「超有望」である理由
・部下に仕事を割り振る際に「相性」から入るのが一番危険な理由
第1章 なぜ若いうちからリーダーシップが必要なのか P.15~P.52
第2章 現実を直視する:日本と日本企業と「ニッポンの課長」の命運 P.53~P.90
第3章 リーダーシップの条件1 論理的な思考力、合理的な判断力が不可欠である P.91~P.130
第4章 リーダーシップの条件2 コミュニケーションは情に訴え根負けを誘う P.131~P.156