リーダー論に正解はありません。時代や年齢、率いる組織の業績や規模によっても求められる能力は異なります。ここでは、リーダー経験がほとんどゼロでダイヤモンド編集部の編集長になってしまった私が、わらにもすがる思いで手にしたリーダー本を紹介していきます。

『結果を出すリーダーはみな非情である』『優れたリーダーはみな小心者である。』、はたまた『最高のリーダーは何もしない』など、一見すると矛盾していそうな5冊を選定しましたが、読んでみるとストンと腹落ちするものばかりです。

特集『編集長厳選!無敵のリーダーになるための5冊』で、これまでにない不思議な読書体験をお届けします。#1は『1万人のリーダーが悩んでいること』を紹介。上司の8割が知らない、部下の信頼を得るために必要な「部下の○○」とは?(ダイヤモンド編集部編集長 山口圭介)

悩める上司の8割が知らない「部下の○○」、1万人のリーダーの指導で判明!

リーダーの悩みのほとんどは
「部下とのコミュニケーション」

 2019年4月に編集長に就任して以来、朝起きてシャワーを浴びる際、いまだにほぼ毎日えずいてしまいます。今日やるべき課題を整理していると、緊張や不安で思わずえずいてしまうのです(もともと緊張しやすい性格ということもあると思いますが……)。

 リーダーに向いていないなあと凹むことが多く、そんなときに『1万人のリーダーが悩んでいること』を読むと、心が少し軽くなります。

 これまでに1万人を超えるリーダーを指導してきたという著者、浅野浩一氏による「悩みのないリーダーはいません。リーダーの日常とは、次々とやってくるトラブルや難問と格闘すること」との教えから本書は始まります。

 浅野氏によれば、リーダーの悩みのほとんどは「部下とのコミュニケーション」に関するものだそうです。業績を上げることがリーダーの大切な仕事であるにもかかわらず、悩みの大半が部下に関するものばかり。確かに、言われてみれば私もそうかもしれません。

 ところが、部下のことで悩んでいるはずの上司の8割が、部下の「あること」を知らないそうです。浅野氏がビジネススクールの授業で部下の「あること」について具体的に書いてくださいと課題を出すと、浅野氏が講師を始めてから20年間、何百回、何千回とこの問いかけをしているけれど、書ける人は全体の2割もいないとのこと。

 この「あること」を理解するだけで、部下とのコミュニケーションは大きく改善すると思います。同書の本文では、8割の上司が知らない部下の「あること」を明らかにすると同時に、以下の悩みについても丁寧に回答しています。

・説教するのが苦手です。「こんなことを言われたくないだろうな」という意識が働きます。
・優しい上司より怖い上司の方が部下も成長すると思っています。私の考え方は古いのでしょうか?
・プレイングマネジャーとして忙しすぎて、マネジメントをする時間がありません。
・部下の信頼を得るにはどうすればいいのでしょうか?
・部下にハラスメントと訴えられるのが怖くて何も言えません。

『1万人のリーダーが悩んでいること』の第2章はこちら

悩める上司の8割が知らない「部下の○○」、1万人のリーダーの指導で判明!

はじめに/目次 P.1~22

「部下を守る」とはどういうことですか? 私は「守られた」経験がないので、イメージできません。 P.23~P.71

部下のマイナス部分ばかりが目に入り、つい指摘してしまいます。ほめる部分の見つけ方、さりげない伝え方についてご指導ください。 P.72~P.83

説教するのが苦手です。私自身、説教されるのが嫌なので「こんなことを言われたくないだろうな」という意識が働きます。どうすればいいのでしょうか? P.84~P.133

正直にSOSをあげてくるメンバーはなかなかいません。「調子はどう?」と聞いても、みな「ぼちぼちです」と答えます。どうすればいいのでしょうか? P.134~P.153

シニア社員にプラスαの仕事を振ると、「私には無理だ」と泣き言ばかり。どうすればいいのでしょうか? P.154~P.187

部下に対し、「この仕事を手伝ってくれないか」と伝えるとき、『仕事を押しつけてきた!』と思われていないか不安です。うまく頼む方法を教えてください。 P.188~P.239

失敗が許されない風潮の中、いかに失敗を許容すればいいのでしょうか? P.240~