接頭辞や接尾辞を分解して
英語のニュアンスをつかむ
前述のセンゲさんの言葉で、テクノロジーの本質について、「Enable and Constrain」(何かを可能にし、何かを制約する)という言葉がありました。
この「enable」という単語は、「able」(〜ができる)という単語に「en-」(〜にする)という接頭辞が付いた単語です。「〜ができる」+「〜にする」で、「〜できるようにする(可能にする)」という意味になります。
このように、接頭辞や接尾辞が付くことで品詞が変化する単語はたくさんあります。その場合、基本的な意味は変わりませんが、英単語であれば1語で表せる言葉が、日本語だと対訳としての単語が存在しないものも多く、ニュアンスを伝えるのに苦労したり、説明的になってしまうのが、同時通訳者としては悩みどころです。
ただ、接頭辞や接尾辞は覚えておくと、とても便利です。
例えば、この「en-」という接頭辞は、以下のようにさまざまな単語に付いて使われています。
「en-」+「large」(大きい)=enlarge(大きくする/拡大する)
「en-」+「rich」(豊か)=enrich(豊かにする)
「en-」+「title」(肩書・称号)=entitle(その肩書・称号にする/権限を与える)
「en-」+「vision」(視覚)=envision(視覚にする/思い描く)
日本でも時々聞く「エンパワー」というカタカナ語も、「en-」と同義の「em-」という接頭辞が名刺の「power」に付くことで、「力を与える」という意味の動詞になったものです。
「em-」+「power」(力)=empower(力を与える)
このように、英語の単語を見るときには、接頭辞や接尾辞を手がかりに分解してみると、意味やニュアンスがつかめるものがあります。「分解して言葉のニュアンスをつかむ」というのも、英語を「ツール」として使いこなすためのひとつのコツです。
自らの目的を見極めた上で、英語というコミュニケーションツールを使いこなすにはどのような工夫ができるのか、という視点を持つことが大切です。そうすれば、英語に苦手意識を持つ方も、英語は、「constrain」(制約)よりも、「enable」(可能)にする存在に、なってくれるのではないでしょうか。