禁煙を成功させるには、禁煙中の体の状態と精神の状態を安定的に保つことも重要だろう。禁煙治療が健康保険の適用対象となったのは、喫煙は一般的な習慣というよりも依存症の性質が強いと国が判断したからだ。重度の依存症を自力で克服するのはなかなか難しい。

 もちろん自力で禁煙に成功した人も少なくない。ただし病院での禁煙治療か、自力で禁煙にチャレンジするかは、禁煙成功を分ける非常に重要な決断といえるのだ。

瞑想で心を整えると
禁煙が成功しやすくなる?

 病院での禁煙治療にしろ自力での禁煙にしろ、たばこを吸わない状態を継続できるかどうかは切実な問題だ。禁煙を成功させるには、たばこを吸いたいという欲をコントロールするスキルも必要である。

 禁煙中の人が誘惑に打ち克つためのメンタルトレーニングとして、瞑想の効果を紹介したい。書籍『ハーバード医学教授が教える 健康の正解』(サンジブ・チョプラ著、ダイヤモンド社)によると、瞑想には特定の疾患や行動を抑制する働きが期待できるという。

 オレゴン大学で行われた研究では、1日平均10本のたばこを吸う参加者27人に対し、瞑想が減煙にどのような効果を与えるかを調査した。

「参加者のうち15人にマインドフルネスと瞑想の方法を指導したところ、瞑想群は2週間後に喫煙本数が60%減ったのに対し、対照群の行動は変わらなかった。また1ヵ月以上あとに、瞑想群のうちの5人が、減煙が続いていると報告した」(『ハーバード医学教授が教える 健康の正解』より)

 2011年にイェール大学医学部精神科が行った研究では、アメリカ肺胸部学会が開発した『喫煙習慣からの解放(FFS)プログラム』と、瞑想によるマインドフルネストレーニングの効果を比較した。

「マインドフルネスのトレーニングを受けた群は、FFS群に比べて、試験期間中の喫煙本数の減少率が大きく、追跡期間中もその減少幅を維持した」(『ハーバード医学教授が教える 健康の正解』より)

 これらの研究調査によって、瞑想には禁煙・減煙の促進と維持を助ける可能性があることが示唆された。たばこは健康を損なうリスクを伴う嗜好品だ。運動を趣味とする人は、喫煙によって運動で得られるはずの満足感や達成感が低下している恐れがある。瞑想を取り入れながら、禁煙成功を目指してみてはいかがだろう。

【参考書籍】

『ハーバード医学教授が教える 健康の正解』(サンジブ・チョプラ著、ダイヤモンド社)