今の香港映画に創作の自由はない

――カンヌ後、警察の国家安全処が尋ねてきたりした?

それがないんですよ。知り合いで国家安全処から電話をもらったり、面談に呼ばれたりした人たちはいるんですが、僕自身は皆無。尾行されたという人もいるけれど、それもない。脅しや電話での嫌がらせも含めて全部なし。今僕が直面しているのは、全て自己規制なんです。あえて挙げるなら、親中紙が僕を名指しで「国家安全処が逮捕すべきだ」と書き立てたことがあります。いまのところ、それだけ。

映画『時代革命』では2019年香港デモで警察の暴力と戦っていた市民たちの姿を描いている映画『時代革命』では2019年香港デモで警察の暴力と戦っていた市民たちの姿を描いている Photo:Haven Productions Ltd.

 同業者たちはあえて、政治的にセンシティブなテーマを回避しようとしている、と監督は言った。2021年には、国家安全法の規定に沿って映画公開のための検定制度条例が書き換えられ、これまで「なんでもアリ」と言われてきた香港の映画界にほぼ初めてといえる「審査による公開禁止」ランクが導入された。

明文化されたことで、今の香港には創作の自由がなくなってしまった。香港は正式に新しい時代に入ったんです。政治が映画を審査する時代です。もう以前と同じではいられなくなり、映画もその質を変えていくことになります。ますます社会問題に触れる作品は減っていくことになるでしょう。