魅力を失う「一国二制度」

 2022年版でも、「一国二制度」の下で「台湾特別行政区」を発展させる意向が示されている。

 しかし、この「一国二制度」も今では色あせたものになった。1979年に、鄧小平が提唱したこの新たな制度に当時は国際社会も目を輝かせたが、2019年の香港での大規模デモをきっかけに「一国二制度」は有名無実となり、期待を託すことは難しくなった。

 1990~2000年代は中国には全世界を魅了するだけの未来があり、「中国市場への進出」も魅力あるものだったが、今はそれほどでもなくなった。そもそも、台湾の国民党時代に鄧小平が呼びかけた「一国二制度」は、40年以上を経て現状にはそぐわないものになってきている。

 それでも「統一」は避けて通れなくなってきた。

「中国建国100周年に当たる2049年までに」とも言われていたが、“2027年説”も出てきた。米国の動きに警戒を高める中国は、「台湾統一」に向けた、いわゆる“サラミ・スライス戦術”(小さな行動を積み重ね、既成事実化させる戦術)をより加速させてくるだろう。