安保協力の深化が日韓の国益
韓国の観艦式参加は試金石

 現在日韓双方にとって最大の懸案は、中国と北朝鮮によって生じている東アジアの安保危機である。

 中国については台湾侵攻への懸念と海洋進出、それによる海上輸送ルートの遮断、中国による経済的な報復による経済的悪影響など、多くの不安要素を抱えている。

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 北朝鮮については、核開発の進展によって、核弾頭が小型化し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や戦術核が実用化される懸念が高まっている。また、最近北朝鮮が発射するのを見ると、極超音速ミサイルなど迎撃の困難なミサイルが開発されている。

 日韓関係には徴用工問題や慰安婦問題など固有の歴史問題が存在し、これまでの韓国の対応は、約束破りが横行した。しかし、尹錫悦政権になってから日韓関係の改善に積極的に取り組んでいる。

 こうした視点に立てば、日本にとっての国益が何かは明白である。歴史問題については原則を維持することは当然であるが、その上で、緊急な問題は東アジアの安全保障の見地から韓国との安保協力を進めることである。

 その意味で海自の国際観艦式に韓国海軍が参加することは、文在寅政権の対日姿勢からの決別を意味し、安保協力にさらに一歩前進することを意味する。

 国際観艦式への韓国軍の招待は、韓国に対する重要なメッセージとなったといえるだろう。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)