具体的には、岸田首相自らが「物価・賃金・生活総合対策本部」の本部長を務め、「小麦の輸入価格上昇」「エネルギー輸入価格上昇」の対応策の具体化を要求している。また、地域の電気代の負担軽減に向け、「地方創生臨時交付金」における1兆円の増額を指示している。

 岸田首相は今後、こうした経済対策を次々と打ち出していくことだろう。同首相は自らの経済政策のコンセプトとして「新しい資本主義」を掲げている。その内容は、アベノミクスが置き去りにした中小企業や個人への再配分を強化することだ(第305回)。

 今後は新しい資本主義の一環で、これまで以上に「予備費」を使った補正予算が編成されるはずだ。予算には、安倍政権以降実施されてきた「全世代への社会保障」「子育て支援」「女性の社会進出の支援」「教育無償化」などが盛り込まれるだろう。コロナ禍関連の給付金や補助金も続くだろう。

自民党の「さらなる左傾化」で
お株を奪われた野党の行方は?

 だが、「労働者への分配」は、本来ならば左派野党が取り組むべき政策だともいえる。

 これらを推進する自民党の動きについて、筆者は「左傾化」だと指摘してきた(第308回)。安倍政権以降に左傾化した自民党は、岸田政権の支持率対策によって、さらに「左旋回」するだろう。

 ここで気になるのが、自民党にお株を奪われ、さらに居場所を失いそうな野党の動向だ。

 確かに野党は今、自民党と旧統一教会をめぐるスキャンダルを受け、「千載一遇の好機到来」とばかりに攻勢を強めている。旧統一教会と自民党の接点を厳しく追及し、臨時国会の早期召集による徹底審議を要求している。

 だが、それでも決して順風満帆とはいえず、次第に野党が抱える「深刻な問題」が明らかになるだろう。

 岸田政権は前述の通り、本来野党が訴えるべき政策を次々と実行していくはずだ。野党がその中で、自民党との違いを国民に示すのは難しい。

 野党が弱者救済策を求めたら、岸田政権は待っていましたとばかりに「野党の皆さんの要望でもあるので」と、さらにバラマキを拡大できるからだ。

 だから野党は、岸田政権の支持率低下を手放しで喜べない。岸田政権を批判しているようでいて、実は自民党の「補完勢力」になり下がっているのが、「深刻な問題」の実態だ。

 この問題は、はるか昔から存在していた。