岸田政権の「重点投資4分野」は
決して目新しくない

 岸田政権の「新しい資本主義」には、「人」「科学技術・イノベーション」「スタートアップ」「グリーン・デジタル」の4分野に重点的に投資するという方針も含まれている。

 だが、重点投資4分野は「新しい政策課題」ではない。欧米や中国などが何年も前に済ませている「古い政策課題」ばかりなのだ(第305回)。それを岸田政権は「新しいことをやります」と胸を張ってアピールしている。これはいささかピント外れだし、傲慢(ごうまん)でもある。

 例えば、「人」への投資では、これまで以上に「賃上げ」に取り組むとともに、非正規雇用も含めた約100万人に向けて能力開発や再就職の支援を行うとしている。

 ただし、「賃上げ」は、これまで政府からさんざん民間企業に呼び掛けたが、思うような成果を上げられなかった。「同一労働同一賃金」の原則に基づく政策も、正規・非正規雇用の格差を解消したとは言い難い。

「科学技術・イノベーション」への投資では、大学を支援する10兆円規模のファンドを立ち上げ、人工知能(AI)や量子技術などの高度な研究活動に投資するとしている。

 しかし、AIを国家戦略とするのは、諸外国では10年以上前から取り組まれており、目新しさはない。

「スタートアップ」の項目では、新興企業への投資額を5年で10倍に増やすことを視野に入れた「5カ年計画」を年末に策定するとしている。

 だが、日本政府のスタートアップ支援は他の先進国に比べて相当に遅れており、今さら「新しいことをやっている」とアピールしていることに違和感を覚えざるを得ない。

「グリーン・デジタル」投資では、「脱炭素社会」の実現のために、今後10年間にわたって官民協調で150兆円の関連投資を行う計画だ。

 だが現在の日本では、いまだに石炭火力発電所が多く運用されている。海外では、強大な力を持っていた「石油メジャー」が再生可能エネルギーに取り組み、「総合エネルギー企業」とでも呼ぶべき企業体への変貌を遂げている中、日本企業は脱炭素対応が遅れている。

 実際に、脱炭素シフトが遅れている日本企業から「ダイベストメント(投資撤退)」を宣言する世界の投資家・金融機関が急増している。

 私は本連載で、こうした自民党の政策の問題点を「Too Little(少なすぎる)」「Too Late(遅すぎる)」「Too Old(古すぎる)」だと批判してきた(第294回・p3)。

 この問題の根底には、野党の政策構想能力が著しく落ち、自民党の対抗馬になり得る政策を打ち出せていないことがある。

 デジタル化・脱炭素などの領域において、日本が諸外国からの後れを取り戻すためには、与党・自民党に新しい政策の構想を提供できる野党が必要だ。

 だが、自民党の左傾化にのみ込まれて、補完勢力となり下がった立憲民主党、共産党などの「左派野党」にはまったく期待できない(第307回)。特に立憲民主党は今後、「社民党化」して衰退していくだけだろう。

 これらの政党よりも、まだ期待できるのは「右派野党」である「日本維新の会」ではないか。