安倍元首相の殺害事件をきっかけに、旧統一教会と自民党の関係が問題視されていることなどから、岸田内閣の支持率が急落している。岸田内閣は今後、支持率回復に向け、中小企業や個人への再配分といった「バラマキ戦略」を強化していくだろう。だが、こうした「労働者への分配」は、本来は左派野党が取り組むべき政策だといえる。自民党にお株を奪われることで、野党はさらに存在感を失っていく可能性が高い。その中で、自民党の対抗馬になり得る野党は現れるのか。歴史的背景を踏まえながら考察する。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
「三つの要因」によって
岸田内閣の支持率が急落
岸田文雄内閣の支持率が停滞している。朝日新聞の世論調査では、7~8月にかけて内閣支持率は57%から47%まで低下した。毎日新聞の世論調査では、同時期に52%から36%まで落ち込み、発足以降で最低の水準を記録したという。
大幅な下落の要因は、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党議員の関係」「安倍晋三元首相の国葬の是非」「新型コロナウイルス感染症の再拡大」の3点だと考えられる。
これらの要因に加え、もし今後、インフレーション(インフレ)が国民生活を直撃した場合、内閣支持率は30%台前半以下という「危険水域」まで落ち込む懸念がある。
では岸田内閣はこれから、支持率を立て直すためにどのような施策を展開するのか。
まず考えられるのは「景気対策」だ。内閣支持率が急落した政権が景気対策に取り組むのは常である。景気の安定が、支持率を維持していくベースとなるからだ。
足元では、円安の進行や資源価格の高騰でインフレが進んでいる。食料品、鋼材などさまざまなモノの価格が値上がりする一方で、国民の給料は物価に見合うほど上がらない。家計の負担は重くなるばかりだ。
岸田政権はその対応に、なりふり構わず全力を挙げることになるだろう。その証拠に、岸田首相はすでに物価対策に動きだしている。