中国と韓国の経済的関係は構造的に変化している

 8月、韓国の製造業PMI(購買担当者景況感指数)は事業環境の改善と悪化の境目である50を下回り49.8に下落した。2020年9月以来の50割れだ。ウクライナ危機が発生して以降、世界経済の中でもわが国を含むアジア地域の景況感は相対的に底堅さを保ってきたが、韓国の景況感は急速に弱含み始めた。

 一つの要因として、中国が韓国のお得意さまから、競争上の脅威に変わり始めたことがある。産業振興策である「中国製造2025」が推進されたことは大きい。半導体や車載用などのバッテリー、量子コンピューティング、人工知能(AI)などの最先端分野に対して共産党政権は産業補助金を積み増した。

 また、共産党政権は国有・国営など主要企業に土地も供与した。このことで中国企業の固定費負担は主要先進国の企業と比較して大きく低下した。その後、米中対立などによって中国の最先端の半導体製造技術の確立は遅れたが、車載用のバッテリー分野やスマートフォン、有機ELパネルなどのディスプレー分野で中国企業の成長は加速している。韓国企業が高シェアを維持した、あるいは事業運営体制を強化している分野で中国企業の台頭が鮮明だ。

 中国と韓国の経済的関係は構造的に変化している。1960年代以降、韓国ではサムスングループなど財閥の事業運営体制が強化された。それと同時に、当時の韓国政府はわが国などからの技術移転を加速させた。こうして、鉄鋼、家電、自動車など工業化が進んだ。

 97年に発生したアジア通貨危機の後、韓国は資材を輸入し、国内でテレビなどの大量生産を行い、ウォン安を追い風にして中国などへの輸出競争力を高めた。近年は、メモリ半導体などの供給体制が急速に強化され、経済面で韓国の対中依存度は高まった。

 しかし、中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいる。これまでのように韓国の企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。今後、韓国企業はより熾烈(しれつ)な中国企業との競争に対応しなければならなくなるだろう。