韓国の労働市場の改善ペースが鈍い。半導体輸出などに支えられ、GDP(国内総生産)は増えているにもかかわらずだ。21年の労働参加率は62.8%で、19年の63.3%を下回った。また、21年の就業者数は前年から36万9000人増えた。ただ、増え方に問題がある。世代別では、60歳以上の就業者数が33万人増と他の世代よりも多い。本来なら、景気回復によって人々の労働意欲が向上し、若年層を中心に就業者が増加するのが望ましい。韓国の労働市場は、若年層のチャンスが少ない状況が深刻化している。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
経済は緩やかに回復したものの
改善ペースが鈍い韓国の労働市場
韓国について、最近、国民の不満が高まっているという話をよく耳にする。2021年、韓国経済は緩やかに回復したものの、国民の重大関心事である労働市場の改善は遅れている。韓国統計庁によると、21年の「求職断念者数」は、14年以降の過去最高を記録した。景気回復を実感できず、就職を諦めざるを得ない人が増えているのは、国民にとって大きな不満であることは間違いない。
短期的に見ると、コロナ感染再拡大による経済活動の低下は、労働市場の需給にマイナス影響を与える可能性が高い。また、産業構造が旧財閥などの大企業に集中する韓国では、今後も半導体など先端分野で大手企業への依存度がさらに高まるだろう。中小企業などに属する人々への経済的な便益は及びにくい。
革新系の現政権は、労働組合にフレンドリーな政策運営によって、「今」働いている労働者を擁護する方針をとっている。そのため、学生や求職者など「これから」働く人々には厳しい状況になっている。
わが国へ来ている留学生にヒアリングしても、「韓国に帰っても就職が厳しい」という指摘が多い。旧財閥系大手企業に依存した経済構造の改革や、持続的な雇用機会の創出が、次期政権の大きな課題だ。