厳しさ増す韓国経済を取り巻く環境

 今後、韓国が経済成長を目指すことは追加的に難しくなる恐れが高まっている。90年代以降、世界経済のグローバル化が加速し、国際分業体制が強化された。これにより世界全体で緩やかに経済が成長すると同時に物価が上昇しづらい環境が出現した。

 それを追い風に韓国の財閥系大手企業は積極的に設備投資を行って大量生産を行い、世界の需要変化に機敏に対応して輸出を増やす経済体制を急速に整備した。その象徴として、サムスン電子などはデジタル家電のユニット組み立て型の生産体制を強化しつつ、半導体の受託製造(ファウンドリー)事業を強化して最先端分野の需要をより効率的に獲得した。ちなみに、この裏返しとしてわが国の家電、半導体、液晶パネルなどの競争力が失われた。

 中国共産党政権は半導体やバッテリー、EV、脱炭素関連の技術やAIなどの開発、生産体制をさらに強力にサポートするだろう。それによって、韓国企業から中国勢へ、シェアや技術の移転が加速するだろう。

 加えて、米国では北米生産のEVに補助金が支給されるなど、物価上昇圧力に対応しつつ雇用を支えるために、各国は自国の事情を優先せざるを得ない。他方、韓国統計庁によると21年の合計特殊出生率は前年比0.03ポイント低下の0.81だった。国内需要の縮小均衡は避けられず、景気を支えてきた対中輸出の伸び悩みがさらに鮮明化すれば、韓国全体で不満、閉塞感が一段と上昇するだろう。

 韓国経済が直面する環境の急速な変化は、わが国にとって他人事ではない。少子高齢化などによって、わが国の需要は伸び悩んでいる。一方で、天然ガス価格などの上昇は経済に逆風だ。

 世界経済の先行き懸念が高まる中で、わが国政府は超高純度の半導体部材や精密な工作機械、脱炭素などに寄与する新しい素材など、企業が世界的な強みを維持している分野での新しい取り組みをより積極的にサポートしなければならない。それが本邦企業の成長を支え、経済と社会の中長期的な安定に無視できない影響を与えるだろう。