BYD2023年から日本市場に参入する中国EVメーカー「BYD」。中国企業の急成長によって、中国が韓国にとっての“お得意さま”からライバルに変化しつつある Photo:VCG/gettyimages

8月、韓国の製造業PMI(購買担当者景況感指数)は事業環境の改善と悪化の境目である50を下回り49.8に下落した。一つの要因として、中国が韓国の“お得意さま”から、競争上の脅威に変わり始めたことがある。中国は韓国から輸入してきた半導体や自動車などの国産化を急いでいて、これまでのように韓国企業が中国の需要を取り込んで成長を目指すことは難しくなっている。韓国経済が直面する環境の急変は、わが国にとっても他人事ではないはずだ。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

中国が、韓国の“お得意さま”からライバルに変化

 足元で、韓国経済の減速懸念が急速に高まっている。背景として、中国経済の低迷に加えて、これまで“お得意さま”だった中国企業との関係が変化していることがある。中国企業の急成長によって、中国が韓国にとっての“お得意さま”からライバルに変化しつつある。そうした変化は、過去、わが国と韓国・台湾企業との間にも見られた構造変化だ。

 また、ゼロコロナ政策に固執する共産政党の経済施策や、歴史的な渇水によって経済活動が低迷する中国経済は景気の回復が遅れている。その結果、韓国は最大の輸出先である中国の需要を、これまでのようなペースで獲得することが難しくなっている。

 最近では、電気自動車(EV)、車載用バッテリーなどの分野で、中国企業が急速に価格競争力を強めている。サムスン電子が健闘しているスマートフォンに関しても、中国企業がシェアを奪取する可能性は高い。それに加えて、ウクライナ危機などによって世界経済の脱グローバル化が加速し、天然ガスなどの供給体制が不安定化したことも韓国にマイナスだ。

 1990年代の初頭以降、韓国はグローバル化を追い風にして加工貿易体制を強化した。それが中国の需要取り込みに決定的な役割を果たした。今後の経済成長をどう実現するか、韓国は正念場を迎えている。