中国では伸び悩んでいたパリバゲットが一気に話題になったワケ

 専門家は、次のように指摘している。

「店舗数は2015年の145店から2019年は一時307店にまで拡大したが、赤字が続いている。ただし、赤字の幅は縮小してきた。セントラルキッチンなどの初期投入費用が業績に影響を与えている一方で、中国国内のベーカリー関連の原料供給、物流システムの成熟度が低いし、同社は中国国内の消費習慣に基づいて製品ラインナップを調整する必要がある」(参照

 中国では苦しい状況だが、一方でほぼ同時期に進出した米国では、早くも利益を上げている。

「米韓間の自由貿易協定のおかげで、製パン用の冷凍生地の米国への輸出には高い関税がかからず、米国本土のセントラルキッチンの建設コストの削減に貢献している」と分析されている。

 中国では、やや鳴かず飛ばず状態だった「パリバゲット」は最近、ある罰金処分を受けて、一夜のうちに、中国で最も知られるベーカリーブランドとなった。

 中国で「パリバゲット」を運営するのは、上海艾斯碧西食品という食品会社だ。ちなみに艾斯碧西はSPCの当て字だ。同社は上海に二つの工場のほかに、トレーニングセンターも持っている。

 2022年4月に上海では、ゼロコロナ政策に基づくロックダウンが強行された。不意打ちされた多くの市民は、食品の購入に四苦八苦していた。そこで、4月23日から26日までの間、周辺市民の強い要望を受け、同社はトレーニングセンターにある設備を活用して、コミュニティーの共同購入の注文を受け、菓子類製品を生産・販売した。その数日間の売り上げは5万8500元(約121万円)だった。

 4月27日、上海の関係機関の取り調べを受け、8月12日に、上海市市場監督管理局は同社に対し、食品製造と販売の許可を得ていないトレーニングセンターでの食品生産・経営活動は違法行為だと判断。売り上げを違法所得として、違法生産に用いられた工具設備とともに没収し、58.5万元(約1210万円)の罰金を科す行政処罰の決定を下した。

 この罰金のニュースには、中国版SNSの微博で瞬く間に1億人以上がアクセスしたという。